俺は剣道に対して完全に熱を失った。

道具としてしか見られない。そんなチームこっちからやめてやる。退部届けを監督に出した時、何も言われなかったのが、全てを物語っていると思う。それからの学校生活は面白いぐらいにつまらなかった。

そんなある日だった、授業を受けていたら、教頭先生が俺を呼びに来た。ただごとじゃないのはすぐに察しがついた。

「お母様が、倒れたらしい。重症だそうだ今すぐ病院に行きなさい」

すぐにバッグをまとめ先生に病院まで送って貰った。病院に着くとベッドで母が眠っていた。担当医と思われる人物がこちらに来た。

「お母様は植物状態です。いつ回復するか分かりません」

本気で夢だと思った。だが、現実はそんなに甘くなかった。

父が2歳の頃死んだのは母から聞いていた。けど父の記憶があまりにも無いものだから実感がなかった。けど今だから分かる、大切な家族を失うことのキツさが、辛さが。

「どうか生きてくれ」

ほんとにただそれだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る