終わりの予兆
「ただいま、、」
いつもよりワントーン低い声で、帰宅の挨拶をした。
「おかえりー!試合どーだったとね?全国大会行けたと!?」母が弾むような声で聞いてきた。心底空気を読む力が欠落している。それともほんとに気付いてないだけか?
「ごめん。負けた。俺がチームを負けさせた」
母は、目を丸くして驚いた。こいつは少しも負けた俺に対する、遠慮がないんだな。
「負けはいい経験ばい!負けて分かることもあるとだけんー」
「いい加減熊本弁直せんと??」
「これお気に入りとばい!」
母とのやり取りだけはいつもと変わらなかった。チームメイトや、保護者はみんな気を遣って俺に話しかけようとはしなかった。母が試合に来ていたら、慰めてくれただろうか? 俺、塚田しんやは最強だった。
「俺、初戦塚田と?終わりじゃーん笑」
「僕、塚田のパートじゃない!ラッキー」
試合会場では、飽きるほどこんな会話を聞かされた。ある日の試合のインタビューだった。
「塚田君はなんで剣道を続けているの?」
答えられなかった。そんなの考えたことなかった。毎日足が動かなくなるまで、手が痺れるまで努力し、大会では勝ち続けてきた。それが俺の日常だった。そこに理由なんかない。あるのは勝ち続けなければいけないというという自分の中縛りだけ
「剣道以外何もないから、、、」
記者は困惑した顔をしていた。
その時からだろうか?俺の剣道への対する情熱が覚めたのは。中学生1年生の俺は考えた。
「このまま剣道してても生きていけないんじゃ?」と。
それでもどうすればいいか分からず、ただ剣道と向き合った。そうあの日までは
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