ディアフォース・ストーリー
朝空 檸檬
〜第1章〜 第1話 状況判断
「…うっ」
どれほど眠っていただろうか。
初めて泥のように眠っていた自分にびっくりしながらも、緑豊かな木漏れ日の中で大の字になって眠っていたのかが理解できる。
「ここは…」
記憶を頼りに思い出したいところだが、病院のベッドで眠っていたぐらいで森林の中で大胆に眠っていたわけではない。
しかもなぜだろう。身体が思うように、軽やかに動かせる。ましてや自力で立てる。
身体の弱かった自分に理解が追いついていなかった。
私は久しぶりの歩行に戸惑いながらもこの森林を抜けるべく獣道を進んだ。
どれほど進んだだろうか。ようやく森林から抜けやっと家らしき建物を見つけた。
「今どき珍しい建物だなぁ…」
茶瓦屋根と藁壁でできた質素な建物が数軒見えた。村というか集落のようなところだ。ぽつんと横の畑で作業しているお爺さんへ声をかけた。
「すみません」
「どうしたじゃ、どちらさんだい?」
と、お爺さんが声を返す。
「あ、申し遅れました。私はハルトと言います。阿部…」
「ハルト…アヴェ?ご丁寧にどうもや」
「阿部ハルトです…すみませんがこちらはどこですか?」
「ここはカルタ村じゃよ。ハルト…アヴェはどこからきたんじゃい?」
「ああ…ハルト・アヴェで大丈夫です。私は東京の病院に居たのですが、いつのまにか外で眠っていまて…おかしな話ですよね」
「トキョウ?ビョウイ?うむ…わしの知らん街じゃのう」
「えっ?」
この時、事の重大に気づいた。
確かに見たこともない建物、そして聞いたこともないカルタ村…
もしかして、いわゆる異世界…へ転生したのか?
小説やアニメなんかでしか見たことがない、現実世界とはかけ離れた存在。私はもちろん信じてはいなかったが、どうやら本当に現実で起きている。
「そう…ですか」
「うむ、どうやら困っているとみた。おまえさん悪いヤツじゃなさそうじゃ。どうじゃ、うちへあがっていくかいのぅ」
「いいんですか!?すごく助かります!」
こうなると、アテのない状況に手を差し伸ばしてくれた恩にすがる思いで即答した。
お爺さんは重そうな鍬を軽々持ち上げ、畑隣の家へ案内してもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます