第3話 寄る辺
「ところで、『聾の者』であるお前には、アレが必要だろう?」
ああ、アレか。
リスポーン地点。
このゲームでは、リスポーン地点をある程度自由に設置できるのだ。
ここにも設置できるみたいだし、置いておくか。
俺は、捻れた管楽器と剣が融合したかのようなオブジェを、地面に突き刺した。
《AーRUーRAーRAー!》
オブジェは震えて、短い歌のような音を出す。
《MELODY FIXED》
はい、これでセーブポイント兼リスポーン地点が設置されました、と。
この奇妙なオブジェは、世界秩序を司る「原初の旋律」の加護を失いし哀れなる『聾の者』の、その寄る辺たる『音溜まり』だ。
秩序の根源たる「旋律」が聞こえぬ者の、最後の寄る辺が音溜まりとは。
酷い皮肉もあったものだ。
まあそんなことは正直どうでもいいんだよ。
それより、一刻も早くララシャ様にホーンを捧げねばならない。
俺はこの世界をDLCか何かだと思うこととする。
適当に殺しまくってホーンを集めて、ララシャ様に捧げて、ララシャ様の神格を上げるのだ。
ララシャ様に貢ぐのは俺のライフワークなので、特に問題はないな。いつも通りやればいい。
さて、取り敢えず、リスポーン地点が正常に動作するか確認するか。
はい、切腹×10っと。
「ば、馬鹿者ぉっ!何をしている?!!」
「何って……、リスポーン地点のテストですが……?」
ララシャ様に叱られてしまった。
俺はただ、一度死んで蘇っただけなのだが……?
「……お前が死ぬと、私は悲しい。できる限り死ぬな。よいな?」
「はっ!仰せのままに!」
おおっ!
ララシャ様!
なんとお優しい!
何度も死ねる俺に対して死ぬなとは……。
愛を感じるな……!
にしても、最近はめっきり死んでいなかったから誤解されていらっしゃるな。
俺は最早、死んだ程度でメンタルにダメージがくるほどやわじゃない。
もう全ての感覚がおかしくなっているので、痛みは感じるが苦痛はバグって感じなくなったぞ!
爪剥がしとか目抉りとか性器刻みとかされても特にもう何も感じないな!
ぶっ壊れちゃった♡
さて、それより早速、敵モブを探そうじゃないか。
俺はいつもの、『平民の服+30』『平民のズボン+30』『平民の靴+30』に、『ショートソード+30』という出立ちで、歩き出した……。
え……?
いや、周回し過ぎて敵のレベルが洒落にならんほど上がってしまっていてだな。
例え、ゴリゴリの重装鎧で全身を固めても、その辺の雑魚敵に噛み付かれるだけでHPの三割が消し飛ぶ訳だから、最終的には全裸で武器だけ持つのが正解なんだよな。
だが全裸だとララシャ様に怒られるので、最低限の服は着ている。
でもまあ、極まってくると最適解は、褌にグレートソード二刀流だ。最悪の絵面だな!
魔法使いの場合は、褌に結晶仮面に杖。
神官の場合は、褌に太陽仮面に聖印。
全員変態じゃないか……、たまげたなあ。
人間性がすり減ったらこうなるんだな、怖い怖い。
俺はちゃんと、最低限パンツは穿いてるからまともだよなあ。仮面は被るけど。
いやでも、パンツより褌の方が軽いからその分有利と言われればそうなんだが……。
おっと、それより敵だな。
俺は適当に、その辺にいる野生動物を剣で斬りつけた。
『ピィッ!』
ホーンは……、たったの10だと?!
何だこれは、一周目か?
何周したかは覚えていないが、俺の世界では、その辺の野生動物すら100ホーンは落とすのだが……。
まあ、ホーンが落ちると知れただけマシか……。
これでホーンが出なければマジギレしてたぞ。
「どうした?」
「ホーンがあまり得られません」
「そうなのか……。だが、焦る必要はないぞ」
ウサギ?的な生き物のホーンが10となると、この生き物を根絶やしにしても10,000ホーン行くか行かないか……。
効率が悪過ぎるな。
やはり、ホーンを集めるならば、強い奴を殺さなきゃならない。
ドラゴンでも殺せれば理想的なのだが……。
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