第22話 蚋襲来
※※※昆虫系モンスターが出てきます。苦手な人はスルー推奨※※※
九十九が突然の激しい煩悩に飲まれかかった時――MIAが警戒感にあふれた声を出す。
「飛翔してこちらに急接近するモノを検知しました。その数、おおよそ200!」
「はあ? 200? 多すぎだろう」
「4分後に到着予定――虫ですがとても大きいです。ドローンが捕らえた映像です」
それを見た九十九の顔が大きく歪む。
「ぐわっ……巨大蚋かよ――」
この世界の蚋はことさら醜く、黒い体にオレンジの体毛を生やし、大きな目玉はエメラルドグリーンに輝いている。
カミソリのような口が更に嫌悪感を覚えさせた。
「そうか、ゴブリンの血の匂いに誘われたか。しまった。すぐに処理をすべきだったんだ!」
九十九は殺戮したゴブリンらの処理をせずに話し込んたことを後悔する。
ブロズローンの街から40キロほど離れているがゴブリンの群れと言い、ここは相当に危険な魔境であるのだと思い知った。
「大きさは成人の頭ほどで地球のモノとは移動速度など大きく違います」
「わかった。さてどうしようか。200となると一匹一匹撃つのは面倒だな」
「先程、ダンビス商会の者たちの遺品を回収しておりますが、剣や槍も合わせて27つあります。馬車の横に置いていますがお使いになりますか?」
「あっ、そんなものがあるのか。MIAは仕事できすだろう、スゲーわ。しかし剣も槍も扱ったことがないな……。他に何かない?」
「武器ではありませんが、ヒポグリフと乗り手を結ぶ鎖をいくつか回収しました。とても頑丈で再利用できると鑑定しました」
「へえ、鎖か。どれどれ?」
九十九は回収品に近寄り鎖を観察する。一つ長さが5メートルほどあるモノがあり、それを手にする。
「何かあったのか? 非常事態ならば教えて欲しいのである」
リエエミカ達が不安そうな顔をしてこちらを見ていることに気づく。
九十九は素直に説明する。
「凄くデカい蚋が200匹来ている。殲滅するので馬車に戻って欲しいんだがどうだ?」
それを聞いたリエエミカ達も露骨に厭忌の顔をし、馬車に戻る。
「わ、わらわは虫が苦手なのである! 特に蚋はダメである。すまぬが後を頼むのである!」
「申し訳ありませんがわたしも蚋はちょっとなのです~!!」
「真剣に検討した結果、わたしもアンライト様に同行する!」
俺だって苦手だよ――と思いながら九十九は鎖を手にする。
「鎖をどうするおつもりですか?」
「武器として使えないかちょっと試してみようと思ってね。あと接近してきたら〈
「了解しました。問題なく稼働できるように調整します」
〈
150メートル移動して待ち構えること2分、巨大蚋の大軍が血を求めて飛来してきた。
気色の悪い光景に九十九は震えながらも4メートルの鎖を回す。
「キモすぎるがやるだけやるか。合図とともに〈
「了解しました」
九十九は巨大蚋の接近を待つ。
200匹のうち15匹が九十九に急接近する。
プピュギュアッ!!
なんと巨大蚋は豚のような声を発し、血を獲得しようと襲い掛かってきた。
「〈
九十九が〈
蚋の翼の羽ばたきもスローモーションのようになった。
九十九は巨大蚋の群れの中心に走り、入り込むと鎖を振り回す。
ビュビュュュゥゥゥッ~~~!!
鎖によって甲高い風切り音が響く。
すると鎖に触れた巨大蚋は無残に引き裂かれていく。
出鱈目に鎖を振り回せばバタバタと巨大蚋を沢山殺せるのではないかと思っていた九十九の読みは当たった。
「はははっ!! ビュンビュン振り回すだけでこれは楽だな」
九十九はまるでミキサーの如く、巨大蚋達をズタズタにし、竜巻のように猛威を振るう。
が、9割巨大蚋を始末した処で気づく。
やばい、このまま通常時間に戻ったら、俺は巨大蚋の体液まみれになってしまう!!
我に返ると九十九の四方は、炸裂した巨大蚋が取り囲むようになっていた。
〈
九十九は身を屈め、大急ぎで巨大蚋の群れから離脱する。
結果、九十九は割けた巨大蚋が次々と落下する場所から5メートル離れた処にまで回避することに成功する。
グシャグシャとなった巨大蚋は飛沫をあげながら地面に転がった。
生き残った巨大蚋は残らず逃げ出していく。
「あ、危なかった。マジで危なかった! 〈
ゲーム内でも使い方が難しかった〈
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます