第28話 作った?!すっごーい!ってやつだな

そう。


三日かけて、空中都市と南の島を作っておいたのである。


一から。


めんどくせーから地球の実在する都市や島を召喚して、それに重力を司る精霊であるヘカトンケイルの本体を埋め込んで半永久的に空を飛ぶ島を作った。ついでに、嵐の精霊フレズベルグに、気圧や風などを制御させる。


南の島は適当に沖縄を作って、大地の精霊タイタンの力で地殻を操ってプレートに直接くっつけた。


で、時空の精霊ア・バオ・ア・クゥに魔法を使わせて、転移魔法陣を複数こさえたので、これで出入りすることとなる。


南の島はこの前に内覧(?)を済ませたので、昨日に飛行都市を作って飛ばした。


今日はそれを見に行く予定だ。




「ふわぁあ……、おはよう」


「し、師匠ー!ヤバいっすよ!アレ!」


「どうした、ザニー?ヤバいことなんてあるか?俺から言わせりゃ毎日が驚きの連続だぞ。逆に言えば驚けない人生は人生じゃないってこったな。やっぱ刺激がないとダメよ」


「いや……、アレ!なんか……、島が飛んでるんでやんすよ?!」


島……?


引っ越した館の窓から、王都の空を見る。


ああ、あれ、俺が作った空中都市じゃん。


「そう言うこともあるだろ」


「ないでやんす!!!」


「でも事実起きてるからさ。それより、朝飯にしない?」


俺は食材を召喚し、調理して、食べる。


ザラマンデルにチーズ乗せトーストを炙らせてチーズを蕩して、にゅーっと伸びるチーズを頬張る。


ハーブソーセージをパリッと齧りつつ、ゆで卵を舌で押しつぶし飲み込み、トマトジュースを飲んだ。


そして、紅玉リンゴをそのまましゃりっと齧り、強い酸味で口の中をさっぱりさせてから、一言。


「じゃあ、行くか」


「へ?どこに?」


「王城」




「やはり貴公の仕業か、アッシャー卿。今朝、朝一番にウォルコット卿が参じた故、分かっておったがな」


「おお、ゴドウィン王!貴方様の忠臣であるこの俺が!悪戯に市井に混乱を振り撒いたと仰せか?!」


「うむ」


「はい」


「……で、アレは?」


「ゴドウィン王、俺はいつも考えていました。この世界はファンタジーなのに、あんまり面白要素がないな、と……。俺が好きなファンタジー像は、最後の幻想的なああいう感じの雰囲気ファンタジーであって、クソの匂いが漂う薄汚い後進国のリアルな実情を見たい訳じゃねーんだよな、と……!」


「つまり?」


「普通に、飛行大陸です。あの上に、城と街があります」


「んーーー、そうかーーー……」


王様は眉間を揉みほぐしつつ、こう言った。


「……あーーー、あそこは、貴公の領地という扱いでよいか?」


「おっ、良いですねえ!辺境伯だ!」


「うん、もう辺境伯にでもなんでもしてやるから。他は何もしておらんな?」


「ああ、後は南の方に島を作ったんですが」


「島を占拠したの……作った?……え?作った?!」


「はい、地盤を操って、用意した島をプレートに乗せて。美しい海が特徴の、常夏の島ですよ!最高にアロハな感じですね!まあ沖縄なんだけども」


「んーーー……、そう、あーーー……、そうか。では、そこは……、飛地でよいか?」


「じゃあそれで」


「……因みに、領地をどう扱うつもりだ?」


「んー……、とりあえずは、嫁と子供の住処にするかなーって感じですかねえ。飛行大陸は景色が良さそうだし、南の島では釣りをしたいし……。ああ、アレなら解放して、観光地にでもします?」


「観光地……とは?」


「いや、普通に、海とか見てもらって、釣りとかして遊んで帰ってもらおうかな、と」


「ふむ……、それは構わんが、そも、どうやって飛地と行き来するのだ?龍の背中に乗るのか?」


「ああ、その辺は転移魔法陣をその辺に設置するので……」


王様はそれを聞くと、傍にある粉薬を飲んでしばし黙り込んだ。


粉薬は、俺が献上した、よく効く胃薬だな。


「……転移魔法陣が、あるのか?あの伝説の?」


「量産してるんですよ。実家と縁が切れてない貴族の子女の嫁達が、実家に顔を出したいって言うんで、いつでも帰れるように転移門をあげようかなーって思いまして」


「ふむ……、では、王家にも転移門を献上してもらえるか?」


「良いですよ。十個くらいで?」


「う、うむ……、そんなにあるのか……」


「ああ、一回作ったら無限に召喚魔法で複製できますからね」


「うぅん……、うん、うむ、分かった。気にせんようにしよう」


「ゴドウィン王も、時間があればいらしてくださいよ。歓迎しますんで」


「うむ……」


「とりあえず、空中大陸には、王国各地から出入りができるようなハブ都市にしてみようかなーって思ってます。南の島は空中大陸のみから行ける休養地って感じで」


「ハブトシ、とは何であるか?」


「ああ、まあ……、いろんな都市と繋がる中継地にある……、港みたいな都市、ですかね?人通りが一番多い都市になると思うんで、儲かるなーって」


「金勘定の話は分からぬが、理屈は分かる。人が多く通るならば、その場は栄えよう。故に、人の通る場を自ら作る……逆という訳だな?」


ああ、そうか。


交通の便とか、流通の話とか、その辺理解してないんだこの人。


まあ、意味が分かってるなら良いか。


「流石は我が王!その叡智は暗き世を照らす天啓でございますなあ!その通りで、これからは転移門と空中都市を流通の中心地として王国は栄える訳ですな!転移門の配置によっては、山国の果実が一晩で王都に届き、王宮の食卓に並ぶようになるという訳です」


「ほう、それはよいことだ」


俺が流通の中心地を保有することで、今までの中心地だった交易都市がいくつか泣きを見るが、まあそれは良いんじゃないかな?言わなきゃバレへんやろ。


「ではアッシャー卿。辺境伯への陞爵ともなると、儀式が必要であるが……」


「ああはい、出ますよ。スーツで良いですか?」


「うむ、貴公が何を考えているのか分からんが、まあ最低限服を着ていればよいとしよう」


んー、陛下ったら俺に甘いから好きだなあ。好感が持てるよ。


「分かりましたー!じゃあ、俺は領地に人を配置してくるんで!」


「うむ……、っと、消えおったか」


さあ、仕事仕事!

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