正義
にゅうめんマンは、市長に味方する市民ボランティアたちの説得を続けた。
「むちで打たれたり刀で切られたりしながら、カメ用の池とかいうわけの分からん穴を掘らされて、悔しくないのか」
「しかし賭け金がなあ」
「お前たちが援護さえしなければ市長をやっつけることができそうなんだ。多分お前たちのことなんかバナナの皮程度にしか思ってないんだし、サポートする義理はないぞ」
「でも、バナナならおいしいからありかな」
「皮はまずいぞ」
「食べたことがあるのか」
「ないけど十中八九まずいだろ。もしそんなに皮がうまいなら、みんな捨てたりしないはずだ」
「完璧な論理だ……感心したよ」
「どうも」
思いがけず市民からほめられた。説得がうまくいっている印だろうか。……いや、関係ないな。でも、もう少しで市民たちの心を動かせそうな気もしたので、にゅうめんマンは熱を込めて市民たちに語った。
「俺はバナナの話がしたいんじゃない。みんなをしいたげる悪徳市長をギャフンと言わせてやろうと言っているんだ。一緒に正義を実行しようじゃないか」
「正義……!」
「正義、すなわちジャスティス!!」
「ジャスティス……!!!」
ついに、にゅうめんマンは説得に成功した。共感した市民たちは言った。
「俺たちをしいたげる市長の目に物を見せてやるんだ!賭けに負けたってかまわない。借金返済のために働かされることになったら、そこから逃げ出すまでだ!」
「今のところ、ボランティア活動から逃げることさえできてないけどな!」
「なんで、あんなあくどい男が市長を努めてるんだ!信じられねえよ!」
「俺たちが選挙で選んだからだけどな!」
こうして市民たちは続々とにゅうめんマン側に寝返った。それを引き止めようとして市長は言った。
「貴様ら!自分の街の市長であるわしを裏切って、どこの馬の骨かも知れないこんな男に味方するのか!」
「お前なんか市長失格だ!カメの池も自分で掘れ!」
市長の部下であるボランティア監視者たちも、形勢が不利と見ると光の速さで手の平を返し、にゅうめんマン側についた。その結果、あんなにいばっていた市長は、市民にも部下にも裏切られ、何十人もの敵を前にして1人取り残された。
「お前の市長フラッシュ、痛かったぜ。今度はこちらの技を受けてもらう番だな」
にゅうめんマンは1人ぼっちになった市長に言った。
「技だと?」
「ああ。とっておきの技だ。覚悟しておけ」
それだけ言うと、にゅうめんマンは市長をズバッと指差して、大きな声で呼ばわった。
「奥義 市民大反逆!!」
「何だその技!?」
にゅうめんマンが奥義を繰り出すと、その場にいた市民と監視者たちが、口々に意味不明な奇声を発しながら、なだれを打って市長に飛びかかった。
「ちくしょう!貴様ら、わしを裏切りやがって!だが、貴様らごときが何人束になろうとわしを倒すことはできんぞ!ぬおおおおおおおおお!!!」
満身創痍であるにもかからわず、市長は
「はあ……はあ……。肉弾戦でわしを倒そうなんて10年早いわ……」
なんと!市長は何十人もいた敵を1人で全滅させた。――ただ1人、最も
「やはり貴様は、他の奴のついでで倒せるほど甘くはないようだな」
市長はにゅうめんマンに言った。
「もちろんだ。俺が倒されたら、誰が悪徳市長にとどめを刺すんだ」
「生意気な!できるものならやってみろ!」
市長は勢い込んで相手に襲いかかったが、もはやまともに、にゅうめんマンと戦う力は残っていなかった。にゅうめんマンは鈍くなった市長の動きを見切って、最後のボディーブローを、思い切り敵の腹にぶち込んだ。
「ぐふっ……」
地獄王市長は倒れた。
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