第7話

「大人になれない大人がいる」といったニュースを耳にしたことはあるが、いやいや本当に居るとは。大人になってから河原を訪れる、そんな親不孝者が目の前に現れるなんて。何でも、中学二年の時に登校拒否になってから、ずっと学校に行っていないらしい。


 しかし本人曰くそれは大いなる誤解だという。

「いじめが原因とかじゃないし、ただ校則とかが合わなかっただけだし。前向きな登校拒否って感じだから、そこんとこ間違えないでよね」

「失礼しました。じゃあニートってことでいいですね」

「いやいや、配信者として動画サイトで稼いでたから。迷惑系としてわりと有名だったんよ」

 そう言うと彼女は、死装束の懐からスマホを取り出した。死者が持ち込めるのは三途の川を渡るために必要な六文銭だけではなかったのか。なぜ私の目の前で、「河原の石 効率よい積み方」を検索しているのだ。

「現金は持たない主義だからスマホ決済オンリーって言ったら、簡単に持込みOKだったよ。地蔵っち」

 そんなわけがない。きっと彼女の詭弁に騙されたのでもしただろう。ん? それより今なんと?

「地蔵…っち?」

「そう、カワイイでしょ」

 人を食ったようなふてぶてしい態度が、ますます神経を逆撫でる。彼女の言葉を無視して残った仕事を続けることにした。

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