第2話

 地蔵には、大きく二つの仕事がある。一つは人間の願いに耳を傾けること。これは割合に簡単だ。路傍や祠の中で、ひたすらじっとしてれば良い。後は勝手に人間が訪れ、勝手に願いを呟き、勝手にお供え物を置いていく。中には「悪いところが良くなりますように」と、腕やら胸やら頭やらを撫でつけていく者もいる。こそばゆくて辟易するが、世の中には願掛けと称して縄で縛られたり、化粧や泥を塗られたり、油をかけられたりする地蔵もいるのだから、私なんぞは恵まれているのだろう。贅沢は言えない。実は、もう一つがやっかいなのだ。


【六道を輪廻している衆生(命あるもの)を救済する為の一切の業務。衆生から感謝されるやりがいのある仕事です。経験が浅い地蔵には優しい先輩が同行するので安心!  勤務地…六道のいずれか(天道、人道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道) ※転勤あり】


 ハローワークの求人情報風に書けば、こういった感じだろうか。肝心の仕事内容を具体的に示さずに、“一切”で済ますのが怪しい。“やりがい”なぞと抽象的な言葉で煙に巻くのが怪しい。“優しい先輩”が怪しい。自分で挙げた例に難癖つけるのも可笑しな話だが、つまるところ地蔵の仕事はブラックだ、ということが伝われば幸いである。

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