円の誕生会

セクシャルな意味で言うてへんしぃ?

「今週末、僕の誕生祝いにみんなで焼肉行けへん?」

 東雲さんが言うと、一番に和が目を輝かせた。

 ほうか、10月いうたら東雲さんの誕生日やな。東雲さん、毎年自腹で誕生会するもんなぁ。

 去年は3人で鍋パーティしたんよな。

「行く行く! 行きたい! めっちゃ行く!」

「よーし、ほなめっちゃイかせたろ!」

 両手を胸の前でグーにした和と向き合うて、嬉しそうな笑顔で東雲さんが言うた。

 和はうんうんと無邪気にうなずいとった。

 いやいや、いやいやいや。僕基準ではイエローカードよ、ほれは。

 和も笑とらんとなんとか言わな。

「東雲さん、上品な顔で下品なこと言うんはやめてくださいよ」

 東雲さんをたしなめるんは僕の役目なんよなぁ。

 別に僕と二人のときやったらええけど、和の前で下ネタはなぁ。

 いくら僕が和を女扱いしとらんいうても、やっぱり女の子やけんなぁ。

「セクハラ言われたら勝ち目ないですよ」

 エビちゃんもほう言うたけど、東雲さんはまったく反省しとらんみたいやった。

「別にぃ? セクシャルな意味で言うてへんしぃ?」

 ほんなエロい目つきで言うても説得力ゼロやけんね?

「絶対自覚あるやん、徳島ロジスティクスで一番セクシャルな男のくせに」

「それはそう」

 僕の言葉に東雲さんはセンター分けの長い前髪をかき上げてうなずいた。

 歩くアダルトコンテンツの二つ名は伊達とちゃうわなぁ。

 エビちゃんは僕らのやり取りを見て、深いため息をついた。

「二人は何を揉めよん?」

 キョトンとした顔で和が言うもんやけん、僕らは力が抜けてしもた。

 和が気にしとらんのやったら、まあ、ええか……。

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