僕、男ですよ
今日も暑かったなぁ、9月ってこんなに暑かったか?
ともかく僕は、今日もきっちり集配を終えて、最後の荷物を積んで会社までもんてきた。
「おつかれッス、伊勢原さん」
事務所の前で、ちょうど集配からもんてきた和と会うた。和とは昔からタイミングがよう合うんよな。
ほれにしても相変わらず声のでかいやっちゃ、黙っとったら美人やのになぁ。
「おつかれさん、僕ちょっとおしっこしてくるけん」
僕はビニールの書類入れを和に押し付けると、便所に向かった。もうずっと我慢しとったんよ。
「いちいち言わんでええけん!」
僕の背中に向かって和が怒鳴っとんが聞こえた。
和を無視して便所に入ると、海老名さんがおった。
僕は少し驚いて、「あっ」と声が出てしもた。
別に驚くことはないんよな、海老名さんは男なんやけん。
でもなんやろ、なんかちょっと恥ずかしい。
「お疲れ様です」
海老名さんはほう言うて僕に笑いかけてくれた。
「おつかれさんです」
僕も笑い返したけど、うまいこと笑顔が作れとったかどうか自信はない。
僕は海老名さんの隣に並んで用を足した。
どうしても気になるもんやけん、僕の目は自然とそこにいってまいよったらしい。
「伊勢原さん」
名前を呼ばれてハッとして顔を上げると、海老名さんが恥ずかしそうに笑とった。
「僕、男ですよ」
ほう言われて、僕も顔が熱くなってしもた。
「う、うん、ほうみたいやね」
僕はアホみたいな返事をして、ジッパーを上げた。
海老名さん、付いとった。やっぱり男なんや。
残念とか、びっくりとかやなくて、なんか神秘的な感じがした。
天使がおったら、こんな感じなんかもしれん。ほんなことすら思った。
海老名さんは手を洗って、きれいなハンカチで手を拭いて事務所に帰っていった。
海老名さん、僕が見よったんみんなに言わんといてくれるかなぁ。僕が変態みたいやん、僕変態ちゃうけんね?
「おっさ〜ん、いつまでうんこしよんな〜?」
和が僕を呼ぶ声が聞こえて、書類入れを持たせとったことを思い出した。
おしっこや言うたのに、あいつ大声でうんこや言いよってからに。
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