第6話

時間になったのか階段からガイアが降りてきた


「おい、今からあいつの所へ行く。本当にこんな昼間で怖がらせることはできるんだろうな?」

「ええ、もちろんですとも」


ヴィオレ嬢の今の地位は彼女の圧倒的な武力によって成り立っている。しかし、ガイアを慕う部下も多く、彼自身もヴィオレ嬢に反感を抱いている。もし、彼女の弱点が発覚すればそれを用いて即座に組長の座を奪いに行くだろう。怪談はその1つ、という事だろう。


階段を上がり切り、ガイアが扉をノックする。


「入っていいの」


ガイアはズカズカと、私は「失礼します」と言いながら軽く頭を下げつつ入室した。


「それで?面白い話をしてくれるって話だったの」

「ええ、ですので今から準備として知るを使用します。危険はありませんが、この部屋を範囲とします。大丈夫でしょうか」


私はこの部屋にいるヴィオレ嬢とガイアに改めて問うが


「早くするの」

「問題ない」


なんとも漢気に溢れた返事だ


「では、《怪談・語り世》」


私の宣言で部屋が暗闇に包まれ、あったはずの窓も、置物も、机も、人も、目に見えていた全てが黒に染まり、距離感が掴めなくなり、一切の外音も途絶えた。


その自分以外何も無い空間に私の声だけが響く


「ここは語り世。あの世でもこの世でもない。何も在るが、何も無い。ただ私の語りに集中するためだけの空間。どうぞごゆるりとお楽しみください。」


さあ、怪談の始まりです。

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