中3女子が円形脱毛症になったわけ。

@branch-point

受験後に先生に追い詰められた話。

明子が円形脱毛症になったのは、早々に受けた私立受験の合否の学校連絡の執拗な催促からだった。明子はクラスの友人たちより一足早く受験に臨み、その合格発表日はほかの子の受験日よりも早かった。当然、その合格発表の日時は事前に担任や学校へ提出しており、合格発表がまだ先だというのは先生も確実にわかっていた。


合格発表は受験から学校に戻った翌日からそれは始まった。一日に何度も担任が「結果が出たらすぐに教えるように」とクラス全員の前で言うのだ。それは朝の会や帰りの会だけではなかった。受験が終わっていた明子に対しては、直接日に何度も発表されていない受験結果を、出たらすぐに教えるように過剰な催促した。親がそのことを知ったのは、10日ほどそれが続いた後だった。


ぶつんといきなり糸が切れたように、帰宅した明子は開口一番「先生が毎日毎日『結果が出たら教えるように』って言うんだよ!今日は20回くらい言われた!!」と叫んだ。それまでそんな話は聞いていなかったし、さすがに20回というのは誇張表現だと思ったが「そんなに言われたんだ」と返すと「朝の会でしょ、そのあとでしょ、中休みに会ったときに、昼食の時とそのあとの休み時間、帰りの会に、バスに乗る前にも言われたんだよ!会うたびに言ってきて、もうわかっているっていうのに!」と目が座っている。


さすがにこれはひどいんじゃないか、と気づいたときには遅かった。落ち着かせて、夕飯を食べてさせていると、ふと髪の一部がない部分が見えた。気になって「ちょっと見せて」と頭をのぞくとまあるく十円はげになった部分が3か所見つかり、思わず叫んでしまった。


まだ受験の結果が発表される前に、受験前後のナーバスな子どもたちに対して、繰り返し何度も結果を教えるように催促する必要があるのだろうか。居てもたってもいられず担任に「何度も受験結果の催促をされると子どものストレスになっているようだ。結果発表があり次第必ず連絡するので、待ってほしい。」とお願いしたら、担任からは「あなたの子どもにだけ言っているわけではなくクラス全体に言っている。受験後に結果報告を忘れる生徒がいるので、このように何度も繰り返し言わなければならない。繰り返し言うのは普通だ。」と堂々と言いきられてしまった。


そのとき受験が終わっている子は明子だけ。他はまだ受験すらしていなかった。受験に臨む予定だったのは片手で数えるほどのクラスでそこまで繰り返しアナウンスをする必要性が私にはわからなかった。


以前の中学でのみ通用した一部地域のやり方や担任の個人的な指導のこだわりを「日本ではこうだ」言われ、担任の思う日本にいる子どもたちと同じ扱いを受ける部分は理不尽しか思えなかった。

一方で、日本の子どもたちと同じように対応をお願いした部分についてはいつも「ここはオーストラリアなのでできない」という回答をもらってきた。


「子どもの気持ちなんて何も考えていないんだよ。」

その後も受験が続いたが、学校とかみ合うことはなく、ひどく気持ちを害された受験となったのだった。


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