2024年1月25日
デスゲームのような逃走劇。
気が付いたら何かから逃げていた。草木の生い茂る森の中走りまわり疲れ果ててしまい、木や岩の影、窪みのようになっている場所に隠れて、私と恋人ともう一人、顔も思い出せない人との三人で毛布を被って寝た。
「寝ている時ぐらいは見逃してあげますか」
という誰かの声と、何かが毛布から出る私の手に触れる感覚で目が覚めた。幸い頭から毛布を被っていたので、相手に自分が目覚めている事は分からないはず。さて、どうしたものかと考えあぐねていると、
「準備の時間はどれくらい必要ですか」
と言われ、慌てて飛び起きた。
毛布から出るとそこは森ではなく、父方の祖父母の家に似た場所だった。祖母の寝室(普段ならシングルのローベッドとアップライトピアノがある場所だが、そのどちらも見当たらなかった)で目覚め、声の主の方を見やると真紅のローブを纏った骸骨、所謂死神のような人が二人と、上司のような人が一人いた。上司の方は姿が不明瞭だったが、物腰は柔らかそうな感じがした。
「五分だけ時間が欲しい」
恋人が慌てて言い、逃げる準備を始めた。先程まで一緒にいたもう一人の人は見当たらなかった。私としては五分で準備をできる気が全くしなかったので、どうして勝手に五分と言ったのかと軽く言い合いになった。普段の準備は五分で終わらないのに、なぜ五分と言ったのか疑問だ。
結局準備に三十分程時間がかかってしまったが、死神達は襲ってこず、他の見知らぬ人達(なぜか祖父母宅にいた)にも同じような事を伝えていた。
それを尻目に家の外に出ると、駐車場にマット調の黒いスポーツカーが停まっていて、その隣に全身黒づくめのスーツでスポーツ刈りの男がいた。初めて見る顔だったが、どうやら自分の親族らしい。
「もう行くのか」
と声をかけられ、ペットのヨウムを渡してきた。ヨウムを恋人に預け、車の前方、左側のドアを開けて中に入る。左ハンドルだった。左ハンドルは初めてだったが、運転は問題なくできるだろうとミラーの調整をしていると、サイドミラーとバックミラーに死神達がこちらに近付いてくるのが見えた。
車道に出る為ゆっくりと車を発進させながら、まだ車に乗っていない恋人に向けて早く乗れと大声を出して急かす。左折をして車道の出る。加速し始める車と並走する恋人、じわじわと迫りくる死神。
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