ガラクシアスの落日

@kona5255

第1話 襲撃

 人とは等しく平等と言うがそれは嘘と言える。欲や生物的本能による仲間意識によって必ず除け者は存在してしまうからだ。生物的本能的に除け者となってしまった者は追い出されるのが普通と言え仲間でない者をその場に居させるほどお人好しはいない。自己中心的な存在ほど他者を除け者と認定しそれを正しいと信じ込む。しかし、それは現実逃避とも言える。負の感情を抱かせる人から逃げようとしていると捉えれるからだ。つまり、現実逃避を続け生き残った者同士で組まれた集まりには友情など存在せず、そいつで妥協してやると自己中心的思考からなる程度なのだから。何が言いたいかと言うと孤高こそ頂点にして平和な存在ということだ。

 今日は晴天とは言えないが雲が少ない晴れだ。床は木のタイルで壁はコンクリートに塗装を塗り一部にタイルを張っているおしゃれではあるが簡素とも言える自室にある窓から刺す陽射しに照らされ自身が孤高なのを肯定するかのように思考を巡らせる。

 何故かと問われたら俺は。

「人と余計な気を使わなくていいし関わらなくていいからな」

 そう俺は人と関わるのが面倒なのだ。変に気を使って逆にキモがられたら?迷惑だと感じられたら?つまりは変に人と関わって自爆するより人と関らず一人生きる事にすれば良いのさ、あとはプライドなんて捨てて謝ることだな。こっちに非があろうとなかろうと土下座して謝れば相手も許してくれるだろう、ほら誰も傷つかない世界のいっちょ上がりという算段な訳だ。

「だとしても私とも接してくれないのは如何なものかと思うのですが?お兄様」

 と目の前にいる金髪ロングに深紅の瞳、赤黒ドレスにドレスの手袋やらヒールの一種のローファーパンプスと黒い薔薇型髪飾り、黒のプリティーブーケのカチューシャと黒に黒の他に申し訳程度の白と赤なかなり濃い服装をしている俺の妹、サージュ・ロードクロサイトが呆れ表情でいる。

「それと我が妹よ、ノックもせず部屋にいつの間に居たことにましてや朝起きたら隣にいた事についてなんだがな」

 こいつは俺が朝起きたら隣で寝ていたのだ。これで何度目かわからないほどされているのでもう慣れてしまっていた。しかし、俺も思春期真っ盛りな男子なのだ。妹のような胸もあればスタイルの良い女の子がいたら俺の心がスパーキングしてしまうのである。是非ともやめて欲しいところなのだ。

「家族でもやって良い事と悪い事があるのだと俺は思うのだよ」

「これはやって良い事です」

「ぬな訳ねぇだろこのアンポンタン!」

 何言ってんのこの子、お母さんそんな子に育てた覚えないわ!

 まぁ、サージュと出会ってから五年以上は経っているのか、だとしたら…いやだとしてもおかしいわ。

 なんでこんな積極的なんですかね?俺にゃわからんよ。

「それは私がお兄様を愛しているからです!」

「ねぇ、平然と心読むのやめてくれる?」

 何で考えてることわかるの?この子エスパーか何かですか?

「お兄様がわかりやすいからです」

「え?マジで?」

 可笑しいな、俺ポーカーフェイスには自信あった方なんだが。

「お兄様だからこそわかります。常にお兄様を見ているのですから」

 怖い冗談じゃ…なさそうだなサージュの目にハイライトが無い。

「もう少し振り向いてくれても良いじゃないですか」

「ばーか兄弟が恋しちゃ駄目だろ」

「でも私達は”義理”ですよね?」

「それ言ったら全てが終わるんだが?」

 そう俺とサージュは血が繋がっている兄弟ではない。互いの両親が交際をし始めたから兄弟になっているだけで正式な兄弟ではないのだ。しかし、それを言ってしまって全てが終わってしまう。

 それだけは死守しなくては。

「でも…そんなお兄様も……」

 最後の方は聞こえなかったがなんか言ったのはわかった。

 俺そこまで好感度稼ぐ行動したことあった?

「それとお兄様、今日も従者から」

「それ以上言わなくても大丈夫だ」

 さっきとは打って変わって暗い表情でサージュは言うが、最後まで言い切る前に俺が言葉を遮る。

 今日も今日とて陰口から暴言やらを言われたな。

 正直いえば才能なんて要らなかった。さっきも言ったが人とは除け者、仲間意識を重要視する。

 世界の天才に引けを取らない魔法の才能なんてなくて良かったのに。

 この世界には八つの属性が存在する。無、火、水、風、雷、土、光、闇。

 俺の魔法の才能は風属性。昔から魔法学校やらなんやらで学ぶ風属性の扱いなんて幼少期にはできてしまっていた。だが、こんな才能要らなかった。俺はこの才能のせいで周りから嫉妬やら妬みやら何やらと浴びて実の親にも距離を取られる始末。

 サージュが言おうとしたのはそのことだろう。俺自身、サージュと会う前から遭っているから慣れてしまっている。だから一々なんかしてやろうとも思わないし、人が平和に生きるにはストレスの捌け口があって当然、その捌け口が俺なだけだ。

「俺は別に気にしてないし、そういうのは言わせとけ。それとお前が言ったらややこしくなるしめんどい」

「お兄様、後半が本音ですよね?」

「いや、そんなことないぞ?」

 何を言う、俺は別に気にしてなんか無いぞ!

 ただ面倒だからとか考えてないからな。一切考えてないからな。

 すみません、考えてました。だって面倒だもん。そのせいで自室とかで書類と睨めっこ状態に俺がなってみろ?泣き喚くぞ。

 …普通にキモいな。

「私に言ってくださればその従者を辞めさせることだって出来ますのに」

「それをやっても変わんねぇよ、逆にエスカレートするだけだ。人ってのは都合や周りの環境が更に悪くなるとストレスは溜まりやすくなる。そうすると捌け口に対して更に酷いことをしようとする。ならば現状維持というのが一番良いのさ。無駄に刺激を与えずに日々を過ごしていればいずれ無くなる」

 なるべく我が妹にわかりやすく且つ非情さを説明した上で諦めさせるように言う。

 そう説明するとサージュは下を向いて悔しそうな表情になる。と思ったら目にハイライトが無いままだった俺の方を向いたまま棒立ちだった。

 え?なに?怖いんですけど。

「お兄様を、お兄様を傷つける者は、許さない許さない許さない許さない許さない!」

 後半になるにつれ語気が強くなる。

「おい待て、早まるな!」

 やばい!妹がヤンデレモードに移行しやがった!俺に関して何かあると頻繁にこのモードに移行してしまうのを忘れていた!

 絶対よからぬことをしようとしてる!ここは兄として止めなくては死人が出てしまう!

 とにかく今は何でも良いから妹を止めなくては。

「なぁ頼むから止まってくれ!俺にできることならなんで」

 そこで俺は言葉を止める。危ない、何でもって言いそうになっちまったじゃねぇか。

 誰だよ何でも良いから止めようって言うノープラン作戦に出た奴。

 俺だわ。

 言いかけたことにサージュは反応した。

「…お兄様、その先は言って下さらないの?」

 と、すごく嬉しそうに、いや違うわ腹黒笑顔だ。

 腹黒笑顔で俺にその先の言葉を急かす。

 選択を間違えるな!陰キャヒーロー(十七歳)!

「…俺が許容できる範囲で一つだけ何でも聞いてやるからな」

「むぅ…卑怯です」

「逆に俺から卑怯やら陰湿と言う言葉を取ってみろ?クリぼっちが残るぞ」

「なんでその単語だけ残るのですか…まぁ、良いです。わかりました。その提案で妥協してあげます」

 そんなこんなでいつも通りな会話を続ける。

 これが日常会話…?日常会話って何だっけ?いやこれが日常会話なのだ。誰が何と言おうとこれは日常会話なんだよ!

 まぁ、いつも通りに限りなく近くも遠くもない曖昧な会話で時間が過ぎて行く。

 その時だった。

「きゃあああ!」

「!?」

 女性の悲鳴が聞こえた。その後に怒号や男女の悲鳴。

 聞き覚えのある声も混じっている。

 何かあったのは間違いないだろう。

 状況的に誰かが暴れている。もしくは不審者か何かに襲われている?

 可能性の一つとして片隅に置いとくとして、俺がやるべきことは。

「よし、逃げるか」

 逃走である。

 関わりたくないし、誰かに襲われているのなら自身の命を優先すべきだろう。

「……お兄様が逃げるなら私も付いて行きます」

 そんな会話をしていると、俺の家、館か。館に火が飛ぶ音に水の音、氷の音も聞こえた。

「……これは他人事じゃなさそうだな」

「ですね、どうされるのですか?お兄様」

 それ聞かれたらそりゃあまぁ。

「逃げるか」

「ここまで会話して逃げるのですか!?」

 だって俺の座右の銘はプライドを捨てて事勿れ主義を守れだからな。プライドなんて捨ててやるわ、面倒事には巻き込まれたくないんだわ。

「でも、そんな事を言いつつ助けるのでしょう?私の時のように」

「さぁな?」

 まぁ、この状況を打破しなくては逃走も何も無いだろうし。

 とにかく俺は自室に適当に放り投げて置いといていた俺の武器、アイアンブレードと言う名の市販で売ってるようなブレードを手にとる。

 サージュは腰のホルダーに固定してあるレイピアに似た武器で、こちらも市販のと構造や製造、素材が同じで見た目だけ違うシンプルブロードソードと言う名のブロードソードをに手を掛ける。

「戦う準備は大丈夫です」

「そうか、んじゃあ戦闘時は後ろを頼むわ」

「えぇ、私がお兄様の背中をお守りします」

 妹も大丈夫そうだから、自室の扉を開けて廊下に出る。

 時間帯と壁に掛けてある明かりの色で白い壁が薄い橙色のように見え、床は赤いカーペットが続いている。壁は一定間隔で柱の半分になったようなものがあり、その間にラインアートのガラス窓が付けられている。

 館は四階建てで中央には噴水のある大きめな広場、そこを中心に四角形の形で建物がある。現在俺達は三階の左奥にいる。片隅というわけでもないがまぁ端っこの方である。

 玄関ホールへ向かった方が良いだろうし、敵がいたら俺の得意なジャンピングスペシャル土下座で許してもらおう。

 館は結構大きめでここからだと歩いて大体五分掛かる。階段が二箇所しか無いため端だと時間がかかるのだ。

 ともかく玄関ホールへ向かうとしよう。

 少し歩いたら、大体五歩くらい。

 五歩で少しと言えるのか?うるせぇ。

 目の前で窓側から何かが飛来する。

 突然の事だったため、反応しきれなかったが、俺達に直撃しているわけではなく目の前で起きた事だから俺らは無事だ。

 念の為妹の方に視線をやるが大丈夫そうだ。

 煙のように砂埃が舞う。

「あっははははは!」

 狂ったような声が砂埃の中から聞こえる。

 開いた壁から吹く風によって砂埃が消えてその飛来してきた人の姿が見える。

 そこには黒く長い髪を靡かせ真紅の眼をしている女性が現れる。

 手に持っているロングナイフをクルクルと回す。

 その表情は倫理観の外れた殺人鬼のように見える。

「ピンポイントだよ!ピンポイント!殺さないといけない人が二人いるんだからさ!」

 狂気に満ちた笑いを起こし、ナイフをこちらに向ける。

 それに伴い、俺らも戦闘体制に入る。

 ほんっと狂ってんなこいつ、こういう奴の相手するの嫌なんだけどな。

 相手の属性は分からない、なるべく相手の行動を観察しながら相手の力量を図るとしよう。

 最初にそいつがこちらに距離を詰めてくる。流れるように俺に対して二本のナイフを振り下ろす。

 それを受け止めるべくブレードを目の前に持って行き交差するように受け止める。

 「っ!」

 予想より重い二本の攻撃で俺は若干だが体制を崩す。その中、甲高い金属音が廊下で鳴り響く。

「っ!?、お兄様!」

 言うが早いか、サージュの足元を中心に影が液状化するように流れその黒い水たまりのようなのから影の触手が出てくる。

 サージュはそれで凶器に満ちた女を捉えようとするが、俺が受け止めた時に回避に専念出来るよう構えていたのか、俺らから距離を取り触手を避けた。

 素早い、と言うより身のこなしがプロのそれだ。戦い方が熟練者、いや経験が物を言っているのだろう。

 二対一とは言え油断ができそうにない。なんせ相手に隙が感じられない。

 常に全てに対して感覚を研ぎ澄ましている。化け物かよ。

「あっははは!君すごいヨ!だって私の攻撃を受け止めるんだもん!普通なら今の一撃で死ぬのに!」

 笑っている。根っからの戦闘教だな、この女。

「…お褒めに預かり光栄だな、まぁお前みたいな女に好意抱かれても一ミリも振り向きたくねぇな」

 そう言って俺は足に力を込める。今度はこちらが攻めるとしよう。

 『縮地』魔法を応用した移動法を使い一秒足らずに距離を詰める。

「おわっ!......と、危ないね〜」

 そいつはギリギリのところで体を後ろ屈みに避けやがった。

 今のを反応するのは予想外だな。

 最悪腕の一本くらいは持っていけると思ったんだが。

 そう簡単には行かなそうだ。

「良いね良いね♡君気に入ったよ!クロッカス家、長男のジェスター・クロッカス君♪」

「勝手に気に入られても困るんだがっ!」

 喋りながらそいつはナイフを舞を舞っているがの如く蓮撃を仕掛けてくる。一発一発の間に隙間が無く防戦で手一杯だ。

「サージュ!お前は反対方向から一階に向かえ!」

「は、はい!」

 この女を俺が相手している間、サージュにはこの館の現状を調べてきて欲しい。ここで二人で時間を食っていては状況が悪化する可能性が高い。

「あ、そうそう。私が名乗り忘れていたね!私はスノウ・スカイフルって言うんだ!よろしくねっ!」

「ぐっ!お前の蹴り重すぎるんだよっ!」

 ブレードの刃を盾代わりに代用するがスノウと名乗る女の蹴りが重すぎる。

 これ、ブレード大丈夫か?

 一発一発が重すぎるのは理解できた。しかし、それにブレードが耐えられるかだ。

 兎にも角にも長期戦はやめた方が良さそうだ。

 そこからは攻防が続いた。一発の重い敵にはなるべくカウンターを仕掛けると独学で考えていたが実戦となるとその考えが合っているかも不安なってくるな。今回を生き残れば独り反省会だな。そうだよ独りだよ。悪いか。

「どうしたの?どんどん勢いがなくなっているよ!」

 体感で役10分くらい戦っている気がするな。

 スノウの言うように長期戦になってしまい、そろそろ肉体的体力が限界になりそうだ。

 魔法で…いやそれじゃ『精神』が保たない。

 元来魔力とは精神力に直結する。心が強きものほど魔力が多く、心が弱い者ほど魔力が少ない。

 魔力がなくなっていけば心が壊れていく。もし体にある魔力全てが無くなれば精神が無くなる。それは廃人と同じであり生命維持活動が停止して死亡する。

 俺の魔力はまだ余裕はあるが…背に腹はかえられないか。

 一気に攻める!

 スノウが距離を取ろうと跳躍し着地した瞬間、戦闘によって崩れた瓦礫などが浮く、その途端”俺を中心に”突風が吹く。

「おわっ!?」

 スノウでさえこの風には驚くようだ。

 足に最大限の力を込める、ブレードを収めて居合の姿勢を作る。

 地を蹴り、風の力を借り、俺でさえ認識するのにズレが生じるほどの速さで、一直線に斬る。

「死んどけ狂人者『秋風月狼』」

 スノウと名乗る女の『後ろ』に移動する。そして血すらも付いてないブレードを収める。

「あがっ!?」

 横腹を深く斬りつけた。

 少しずれてしまい致命傷で終わってしまった。まだまだ精進する必要がありそうだな。人生楽するために。

 赤いカーペットが吸いきれず血溜まりが出来る。

 それで終わったと思い階段側に向かおうとした時。

「は、はは……あはははははははは♡!!!」

 普通なら死んでいるはずなのにスノウは頬を赤らめ狂ったように笑い、起き上がるとまでは行かないが喋り出す。

「あっははは!楽しかった〜♡」

 殺し合いを楽しかったと言うのか。

「やっぱりお前狂ってるわ」

「狂ってて良いよ♪それが私だから、それじゃ私はお暇するね。ジェスター君は私が殺すよ♡」

 血溜まりように流れた血が動き、スノウが血溜まりの中に沈んでいきそのまま血ごと消えていく。

 完全に消える前にスノウの声がした。

「やっぱり私の見立ては間違ってなかった♪君の人生が私を殺すことを楽しみにしてるよ♡」

 そう言うと完全に消えていき声もしなくなった。

 俺も俺で消耗が激しいな。もう秋風月狼は出来そうにないし、まず魔法をこれ以上使えば危ないだろう。体感的に半分近くなくなったな。

 眩暈がする。出血もあるしボロボロだな。

 歩くだけでやっとだ。先頭は何としても避けないとな。

 ポタポタと血を流しつつ壁に凭れながらも階段を目指す。

 先程の戦闘とスノウについて考える。

 あのスノウという奴はなんだったんだ?

 それと最後のは魔法と言える。希にだが血属性が扱える奴がいると聞くがあう言うことが出来るのか。

 逃走に使えるのか厄介だな。

 それとあいつが最後に言っていた言葉。

 なぜか引っ掛かってしまう。謎の奴だがあれほどの致命傷を負わせたんだ。当分は会わなくて済むだろ。

 あぁ、ベットが恋しい、一日中寝ていたいお年頃なのだ。

 身体が怠いな。

 今気づけば静寂に包まれていた。あちこちの壁が壊れていて日差しがもろに差し込んでくる。

 ブレードにがたが来ている。買い替え時か、まぁ仕方ないな。

 階段を降りる。

「あっ」

 踏み外してしまった。

 受け身を取る体力も残ってない。

 このまま倒れてしまう。

 しばらくしたが衝撃はなかった。

 そして柔らかい感覚が俺を包み込んでくれた。

「お兄様……け、怪我が、出血が…!」

 泣いているサージュが優しく抱き支えてくれた。

 背中に日差しで感じる暖かさとサージュの暖かさが交わる。

「俺なんか心配しなくたって良いだろ…」

「居なくならないで……私の側から……お願い…」

 抱きしめる力が強まる。

「あぁ、すまん」

 抱き締めるのやめてよここ他の人に見られたら俺終わるんだが?キモがられて変な噂立てられて追い出される未来しかない。追放案件だからやめて?まぁ正直、俺がいなくたって大丈夫だろうに、それに”全員”助かれば良いだろ?

「お兄様…」

 か細い声で聞いてくる。

「なんだ?」

 何か言いたいことでもあるのだろうか。

 まぁ心配させてしまったらしいし、出来ることなら叶えてやるか。

「私に心配かけさせたお兄様が悪いですから責任持ってお兄様の側にずっとずーっと居させて下さいね?」

「断る」

 妹とずっといる兄ってのは世間対的にアウトライン超えてるから、警察のお世話になるお話だから。彼氏とかだったらいいよ?俺兄よ?

「なんで…なんでなんでなんでなんで!」

 小刻みに震え出し呪詛のように同じ言葉を繰り返してくる。

 やっべヤンデレモードに移行しやがった。面倒だなー。

「一旦落ち着け妹よ」

「ご、ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 あぁ聞く耳持ってないわ。どうしよこれ。

 まぁ言えることがあるとすれば。

「自室で寝たい」

 ただそれだけである。

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