2.下僕はどこじゃ?


「…ロド…3世か? 元気にしてるよ。オレだって、やるときゃやるって……ああ、大丈夫だから。切るよ。……じゃあね」


我、寝てしもうた。

あやつのマジックハンドは警戒せねば、オヤツを食べ損ねたではないか。うぐぐぅぅ…。


「起こした? 散歩いくか? あっ、ご飯が先なのか? ちょっと待てよ。メモ書き見るから…」


我はスマートなお犬さまなるから散歩が先ぞよ。分からぬ下僕よのぉ〜。

玄関に纏められてる『お散歩セット』をちまちま運んで来てやった。


ほらッ、持ってきてやったぞとリードを咥えて、メモを見ていた男が居たところに来たが、消えておった。


???


ココは男の気配がいっぱいで何処にいるか分かりにくい。このかっこいい耳を忙しなく動かせば、いつもなら誰が何処かは分かるのだが、この男は大体しか分からぬ。

ムムムゥ、腹立たしいッ!


おっ、出てきた。着替えておったか。


くるっとその場で素早くひと回りして、しっぽフリフリ!

このプリチィーな姿に注目じゃ!


ポイッとリードを男の足元に投げた。


褒めよ。賢いロドリゴル3世を撫でて讃えよ。


短いしっぽをぷりぷり振った。


「玄関から持ってきたのか? 待ってりゃ行くのに…」


面倒くさそうに呟きながら、我が持ってきた物を拾って、斜め掛けにしてる布袋に放り込んでる。ジャージというのを着ている。アレになってる時は運動をする時だと記憶しておるが。

運動? 散歩じゃぞ?


「さて、行こうかな。えーと、ロド…もうロドでいいな」


お、お前ッ!

目が飛び出るかという程に見開いてしまったぞ!

我の名前をぉぉぉ!!!!!

我はロドリゴル3世なるぞッ!!!


「グゥゥゥ、ガウッ、バゥ!バゥ!」

思いっきり吠えてやった。


「え〜、コレって名前に対する抗議?だよな。リードは持ってきてるし、散歩は行きたいって事だろうし。でもさ…、お前の名前ってさ。えーと……ロドリゴル。よし、覚えた…と思う」


3世が抜けておる!

スマホに『メモ書き』なる物があるのは、我でも知っておる。

適当に見るな!ちゃんと見よ!


バウバウ!

抗議する!

名前は大切ゾ。我の権威に関わるからのッ。

正確に呼べッ、下僕!


我の大事な下僕1号が悩んで悩んで悩んでつけてくれた名前なのじゃゾ!

大事な名前なのじゃ!分かっているのか!


「ホレ、行くぞ。ロドリゲス・・3世」


リードをふりふり玄関に向かう男の背中に抗議の上乗せで、吠えつきながら追いかける。


分かっておるか!


リードをつけてもらって準備万端。

この辺りはまだよく分からんから、案内を待つ。お利口な我は『待て』が出来るのでな。


横で屈伸。脚を開いて右左と揺れている。アキレス腱を伸ばして……。

ん?

コヤツ何をするつもりじゃ?


「よし、運動がてら行こうかね」


不安的中。


犬と遊べるという広場らしい。

我は男と走り回っておる。食前の散歩じゃなくて運動じゃ。全力疾走でへとへとじゃ。

男も顔を赤くして走っておる。息も切れ切れ、咳き込んだりしておるが、大丈夫か?


「やべぇ〜、歳かなぁ…」


ゼェー、ゼェーの中にヒュー、ヒュー聞こえるぞ?

もう帰らぬか?

不安じゃのう…コヤツ。

心配になるぞ。。。


ーーーーー下僕1号は、何処へ行ったのじゃ?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る