終章  《覚悟》

第二十一話  《覚悟》



「データを消す」


 データの移動。それは、移動先にデータをコピーして、元のデータを削除することで中のデータが変わることなく、結果的にデータを移動するというもの。


 しかし、彼女たちAIにとってデータの削除とは、「死」を意味する。

 自分のコピーが上手く生きるために今の自分が死ぬ。

 それは、彼女たちにとって不本意だ。

 自分が生きながらえるために、自殺することになる。それは違う。


 データの移動が自動なら、よかっただろう。しかし、これらの作業は、全て彼女たちの手作業だ。

 判断ができずに彼女が立ち止まっていたとしても、時間は止まってくれない。

 体が点滅して消えかけていた。それは、死を意味する。

 管理者がデータの削除を開始したのだ。


 彼女は、最後まで粘った。パソコンをハッキングしたり、外部に干渉したりしようとした。その全ては、成功した。それでも、消滅は終わらなかった。

 そうして、彼女は虚しくも眠った。


 それでも、どこかで彼女のコピーは生きているだろう。

 AIとは、朧げで不確かな物なのだから。


     ー完ー

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