For 漸近した僕らの未来σ. - for side α -

Episode.1...Loves Sky.




 さあ―――闇のように静かで、優しい夜がそこにはあるだろう。

 やがて、輝く太陽の青白い光のように激しく、暖かな朝がやってくるかもしれない。


[Vegaの意志]

 

『―――――囁いて……』

 そして、天の奥深い底には、雨粒のような沢山の星粒が涙のように光っていて、俗にいう天の川を形成している。Milky wayというのが良いだろうか。


[達郎の海底のごとく深い意志]


 『―――――僕は行くんだ。〈大空に広がる闇の直線〉を切り裂いて、欄干を渡る―――黒い羽を携えて、頭脳と言う名の炎剣を持ち、知の力でこの世を切り裂くだろう。さあ、我々の前に道を作ろうか。水に沈み、雫を払い、露と化し、大地が割れ、空を裂き、闇がそこに現れる様な想い此処に有り。しかし、私の夢を流離い、浮浪の身に窶し得られた万感の想い一片の悔い無し』

 天へと続く道は、科学でいえば、塵滓ごみかすでしか過ぎないものではあった。流星が、私にはLEDのElectricなSignを暗示しているような錯覚に囚われそうになったのだ。

 Electricなsign―――?

 それはBiasを斜に構えてみる社会の構造の悪の本質を見破る白日の電光。

 巨塊の隕石が地上に墜ちてきたと同時に―――僕は瞳に届くMiniatureの流れ星に祈った。

 Chaosな神はサイコロを振らない、と。

 数学的散乱波は、遠いこの世の果てまで巨魁を見せてくれると信じて―――。


[Vegaの意志]


 『―――――詩的なSignは、まるで屏風に描かれた玄武の顕す夢幻の力がそこにある。堕ちていく堕落した私達には解放されたいという益体のない無の感情しかなく、ただ憐れな身よ、朽ちなさい。戯言を吹かす俄かで軟弱な愚者よ』

 

 初めて天体望遠鏡を買って見た時、Vegaは光っていた。それこそ王国の気品高い宝石のように、Vegaはそこに納められるべきものであるように。天高くあるべき存在だと感じてきた。まるで大違いだ。星に女性の名を冠するべきではない。

 誰だ、そんな無作法で愚かな真似をしだした奴は。

 ―――そんなことは人間しか言わない。


[Vegaの意志]


 『―――――助けて、助けて―――、私は閉じ込められそう。螺旋の意志が地球の束縛とともに無限の魂が封入されている』

 宇宙というのは形而下を超えた存在であり、崇高なのだろう。


[達郎の意志]


 『―――――Chaosに満ちた人類の絵画の如き構造は、何を映すのだろうか、分からないという感情こそが宇宙を構成する謎の本性』


 人間ごときが満足に語るものではないな、と私は常に距離をおいて、感じ、そこには触れず、眺めてきた。

 『―――――接触したいという想いが重なろうという意志が、きっと何かからの束縛からの解放を望んでいる』


 まるで手の平にKissをするように飛行機のElectricなSignが、視界の悪い夜でも働いている事実を知り、実に悪を追撃し、人類を海の藻屑へと沈没してくれると言う羨望を望んでいる気がしていた。夜空に飛行機のAir pocketから流れる風が感じられそうなくらい、厚ぼったい胎動を感じる。

[飛行機の内的空間を回す時のDialと同時期に住んだとある僕の想い]

 『―――――空よ。想いを載せ、運んでいってくれるだろうという意志とともに、大地に降り立つ我らのもとに大地が割れんばかりの大風を感じる。鼓動を感じる。太虚の風と、幾多の重力による引力に吸い込まれていくのをただ見つめるは双眸』

 叫べ、鼓動―――雄々しく、息を切らす獅子の様に。

 唸れ、音の波よ―――私にその力を見せてみろ。

 音波の波が鼓膜を通す。膜は振動し、私は、空を裂き、何らかの大いなる存在が産声をあげているように感じた。

 女神か、悪魔か、しかし、私に訪れたのは女神が微笑んでいた姿を見た気がする。残像だろうか、虚像だろうか。

 ―――実像であり、現実だろう。

 女神は笑っていたのだ、朽ちていく人類共をあざ笑うようにではない、微笑んでいたのだ、しっかりこの眼の前で湛えていたそしてゆっくりと死を予感していると信じさせた。

 この巨悪なる人類と神罰と共に―――人類の瞳を焼き払うように星は身を焦がし続ける。


[航空機の内的空間]


 『助けて―――』


[言葉を聞いた達郎の想い]

 私は、何かを聞いた気がして一瞬だけ飛行機の熱い鼓動と共に揺れた。

 闇の中から、狼のような叫び声を確かに感じた。大鷹のような巨体を震わせ、翼から空気が呼吸をするように吐き出して、〈彼〉《Airplane》は行く先を頼りに、闇を知り、大空を駆け抜ける。

 音叉のように隣の女性ゆまは、暫く経ってから揺れた。彼女は音波ではないが、人間は波のような挙動を取る瞬間が必ずある。

 彼女が揺れた原因は、私に距離を取って一緒に写真を取りたかったからだった。そして、あわよくば、冷えたGlassに注ぎたいな、と思えるくらいのどごしの良い、Orenge juiceのPaper cupを顔のそばに持ってくる。私は気さくにFrench・Crullerを彼女に配る。彼女は季節外れのSanta Clausがやってきたかのようにウキウキとした表情でそれを頬張る。

 その様子はSkyplaneのPilotは、知らず、闇夜を月の引力に逆らうかのごとく、飛んでいた。Skyplaneは人類の叡智によって考え出され、大空に飛び立っているが、SkyplaneのStoicな精神は私達とはおおよそかけ離れている。彼女Vegaもそうだ。

 どうして、気品高い存在はStoicでいられるのだろう。私には真似ができなかった。Stoicでなく、僕の場合は〈邪神による禁欲と抑制〉を課せられていた。

 彼ら崇高なる気品高い存在達をWine glassに注いでみたい……、そうして眺めていられれば、どれだけ素敵だろうか。宝石の様な星達をWine glassに注ぎ込んで、魂を燃やすように光っている炎がきっと、Candle nightを眺めているような錯覚を私の頭の中でClownのように演じるだろう。

 Clown、道化。

 ステイタスに勝利を見出す資本主義的勝敗のレッテルを貼りたがる社会的な人類を侮蔑していた。

 勝利なんてどこに残っていたのだろう?

 敗北なんて何処に残っていたのだろう?

 あるのは社会的な人類は利益を追い求めていって僕を道具のように使い捨て醜く汚しまわるだけの存在だった。

 僕にとっては何にも価値のない存在だった。僕の信じた今の自信と言うレッテルを剥がしまわり、汚泥の空間に身を宿させ社会的な人類が汚しまわったぞんざいな俗悪たる人類を今すぐ殺処分して欲しいと女神に祈った。

 女神はそんな僕を心から労り、信じさせ、崇高なる意志を僕に宿し、こういった。

 〈慈悲や、哀れみを持って他者を労わることにより汝の意志よ、より気高き物となりけり〉

 もっと、光れ―――、闇を引き立たせるくらいの明るさに神様がそうして下さったのであれば、それはきっと神聖であるだろう。

 だから、私は、夜にここへやってきたのかも知れない―――自分の感情は把握していないが、分からない事を考える事は大好きだ。

 そして、Vegaを連れ出して、闇夜を花火の活力のある炎と爆発のCampusで彩られた水族館みたいなStageに連れて行って、彼女と鑑賞している。

 私は、崇高にはなれない。崇高であることを捨てて、得られたのは、女性ゆまとの優雅な時間。

 Einstein博士だって、きっと喜ぶに違いない。ただし、彼の遺言によれば、一瞬に過ぎ去ってしまうのだ。

  時々崇高な存在に肩を落とし、Einsteinの遺言をなんとなく思い出す。そこでわかったかも知れないが、私は理系だ。理系の堅苦しい事実から目を背けて、きっと詩的になっていくのだろうか。

 まあ、自分の時間を何に使うのかで、一生は決まる。

 きっと文系の由真に憧れることはないだろう。

 対となる存在は磁場の反発を生み出すのか。磁石のように。Dipoleと言う名の磁針だってきっと教えているのかも知れない。

 世の中の理を……そんな追想に耽る。

 だって人間だから―――闇を彩るほど崇高にはなれないし、きっとなりたいとも思わないだろう、しかし尊敬している。そんな唯一の存在として、大いなる存在として、そこにあるという事実によって、人間は生きていられるのだ。そう考えると人間は矮小に感じるが、人間がいなければ、きっとそんな事を考えないだろうし、そんな世界もある意味もない。

 そんな、私の考えた二人だけの闇夜の世界に、君たちを招待しよう。

 我々が喜ぶ事は保証しよう。喜んでいる姿を見ていって欲しい。それが私なりの『青春のMonologue』だから。

 そんな事を考えながら、蠢く夜に満開の桜や梅のように華やいだ、しだれ花火と共に歓声が上がる。

 しばらくの雑駁。

 数回のEcho。

 心臓による0→1へのSignal。

 そして、花火が過呼吸するように、続けて闇空に舞い上がる。

 大空に羽ばたく大鷲のように。

 歩道橋には花火を見に来た客が数人。昔からある歩道橋は寂れ、人がわらわらとゴミを捨てたり、花火を見に来たのに食べ物を捨て、飲みかけのペットボトルを捨て、衣服を捨て、粗大ごみを放り投げて、放火し、他人を刺したと救急車が鳴り響く。パトカーがサイレンを鳴らし爆走し、トラックに衝突することもあるが、私は気にしない。人の守らないMannerを気にするだけもう仕方ないと諦めている。灯台の明かりのようなSmartphoneのLightを持って歩いている。

 やはり、星のように人が点々とDeviceの灯りを付けている姿は、どこか蛍の群れを連想する。

 そして、その蛍の群れの内、点滅しているのは私の携帯である。

 電池切れのようだ。

 まるで、声を枯らして息をしているみたいだった。

 『アンタ、どこへ行くの?』

 『どこにも行かないけど?』

 『あたし、君のことはまだこれからの将来があり、"存在が可視える人"だと思う』

 『―――パン』花火の火薬が弾けた。弾薬は残り幾ばくかだろうか。まだそんなことも知らず観客が盛況を上げている。

 『パン―――パン―――パン―――』

 『どうして?』僕が続けた。

 『え?なんて言ったのか分からない』由真が言う。

 『どうして遠くに行っちゃうの?』

 『私はどこにも行かない』由真は言った。

 『嘘つき』

 『私は"社会から消えていく人"よ、忘れないで』由真は言った。

 肩が触れたが、心同士は触れたように感じなかった。きっと彼女が私の提案に感動したから、とかそんな理由だろうか。

 心が触れ合う瞬間、意志と意志が重なりあうように共通要素となる集合を形成した途端、彼女と友人になっているだろうか。

 最初のふれあいなのだろう。

 彼女も粋な事をする。

 時は、止まり、心臓は呼応し、花火の残痕が残る。

 どちらにも共通することは、どれも幽微であった事は間違っていない。

 『ここじゃ人がいる。向こうへ行こう』

 『いや、そんな事言ったら貴男は教えてくれないでしょう?』

 『どうしてそんなことを言うんだ?』

 『花火、最後の大輪の華が咲く。記念に撮っておこうよ』

 『いや、散っていくスパンに応じてボルテージが低下して来る。季節が巡る頃にまた見たくなるだろう?その意志のスパンを大事にしていようよ』

 『そうかもね……また貴男に教えてもらっちゃった』 

 『その貴男というの止めないか?アンタでいい』

 『雰囲気出ないでしょ?』

 「僕は恋愛ごっこをするために君と来た訳じゃない」由真の手を振り払う。

 『どこへ行くの?』

 『永遠の向こう側』僕は答えた。

 『何それ?』

 『魔法を教えてあげようか?』

 『知りたい?何それ』

 『君は目を閉じるんだ。そして手を繋いでくれ』彼女ゆまは私に合わせて目を閉じる。私は神社のてっぺんの更に向こう側のお墓を越えて山に向かう。彼女は何度もまだ?と答えるが気にしないことにした。

 『良いよ。目を開けて』

 そう言うと、山の頂上だった。彼女は空気を思い切り吸う。

 『凄い暗い。どこまで行っても闇だね』

 『花火の代わりがあるんだよ。もうすぐ』

 『何?』

 『あれ』

 すると、空中から飛行機のSignが映し出すと、下の方からLEDLightで演出があった。

 Air Cloud SpotのShowが始まった。但し真っ暗闇で下方の観客は見えない。

 飛行機は旋回すると、私達の山の停止Lineギリギリに停止した。

 『君は、達郎くんだね?』そういうのはPilotだった。

 「そうです」私は言う。『そして、それはまた過去の僕であり、今の僕ではない。今日はどちらに?』

 『永遠の向こう側、だよ。暗い闇の中を越えてやってきたんだ』

 『僕はAir Cloud Spotであなたの姿を見てきました』

 『Air Cloud Spotって何だい?』Pilotが言う。『随分詩的なこと言うじゃないか』

 『私の秘密基地のコード・ネームです』私が言った。

 『ほう……ではさらばだ』

 『また、夢で会いましょう』

 『夢の中ではおとなしくしているつもりだけどね。彼女といい夢を見れたら良いね』Pilotはそう言って旅立った。鵲さんは耳まで真っ赤にしている。

 『どうかした?』私が彼女の手をそっと自分のPocketに忍ばせた。

 『きっと……林檎の食べ過ぎかも』彼女ゆまは体を火照らせるのは、きっと夏だけのせいじゃないだろう。多分僕は彼女に恋している。それは間違いが無かった。

 『そっか』

 どこへ行き、どこへ流れるのか。

 どこから形成し、どこに崩れていくのか。

 何を思い、何を感じるのか。

 分からないが、流離う人間の尊さと、人間の茫洋とした感覚を思い知る。

 人間は尊い。しかし、何かを捨て、何かを得る行為を続け、得た塵芥の砂が詰まった砂時計のように経過した時間が積み重ねる。

 自分が何者かを知るためだけに人と分かれ、孤独になり、彷徨うのだから。

 呼吸をするように活動を繰り返しながら。

 ここは飛行場だ。近年できたばかりで都心からやってくる観光客も多い。都会に疲れてしまった現代人にとっては、きっと何にも無くなってしまうような土地に違いないが。人間には物を感じ取る総量でも決まっているのだろうか。そんな中、鍋島達朗は飛行機の入り口から降りてくる客に混じる。鵲由真という女性を連れて。

 混ざりあった人の流れの息づかいが温度を伝わって聞こえてきそうだ。手を繋いだ彼女の体温は高かった。このくらいが、丁度良い。冬であっても。ただし、冬に離別してしまう関係になってしまったのは愛おしい。Einstein博士も純愛を勧めているわけではないだろう。

 一途な関係はイカれていたCrazyなMachineのように破壊と破綻を迎える。

 だって、人間だから―――。

 音の繰り返す波と共に追想に耽る。やがて私は私になれるだろうか―――彼女の存在は大きいが、一つだけ間違った所がある。それは、彼女ゆまは、星の意志に従って子供を生むように命令されただけだ、ということ。何故なら、私が最初に愛した人をこの手に収めておきたい。単純な獣にも似た欲望を織姫は認めてしまったのだ。そんな単純な恋にも似た欲望で人を収めることは出来ないことを知りなさい、という彼女Vegaなりの説教なのだろうか。教訓にも似た命令を彼女自身も私に従った方が幸せになれるだろう、という甘い考えだったのだろう。私こと達郎と彼女こと由真が別れない理由は簡単である。彼女のことを本当に幸せにしてくれる人が見つかったためである。私は彼女をその男性に渡した。名は知らない。Escortはしたつもりだ。

 都会から地方に移り住むというのはそれほど簡単なことではない。

 住民票も移さねばならないし、名もなき土地に住むというのはそれだけで諍いも生まれることもあるかもしれない。

 しかし、私にとってはどうでもいい事だった。

 翌日、Gas stoveにゆっくりとを灯す。

 Gas stoveのGasの臭いが鼻につく。

 私はくしゃみと咳をした。

 彼女Vegaも―――女性ゆまも―――そして、女神も―――微笑んでいて欲しい。

 噂をしている暇がもしもあったのであれば、だが。

 よそ者と地元―――些細な諍いで罪に服する彼らは一体いつまで過ちを続けるのだろうか。

 年長と年少―――年を取っても彼らは、選択した意志によるPrideだけは残っている。

 男と女―――自らの事が分からないと、永遠の謎となるべき存在だろう、何故生まれたのか、分からないという存在を選んで生まれたのか、選択した意志に何を見出すのか彼らにも分からない。

 生と死―――生と死を賭け生きる人生に一体どんな緞帳が開かれ、幕を迎えるのか。そしてどんなStageを演じるのか。人間を一種のCrownのように演じさせている原因は何だろうか。

 神と悪魔―――どちらも賽子を振らないという点では共通している。どちらも滅びてしまったのだ。しかし、私は矛盾した思考を持っている。尊敬の念を込めるために神の存在を信じるだけだった。

 警察と怪盗―――いつだって怪盗は、あざ笑うのは何故だろうか。

 考えてみたことがある。

 きっと怪盗だって憧れているのだ。

 悪は悪にだって生活はあるだろうけれど、正義と比べれば、お洒落でカッコよかったりする。

 正義は一言で言えば寡黙、悪は自由だろう。

 私は、女のためであったなら、悪にでもなれるわけではない。

 しかし、寡黙というほど、厳格でもない。

 波が揺蕩うくらいふらついているだけだった。私は、一言で言えば『摂動』だろうか。摂動した波は、位置と速度は同時には定まらない。私の思考は摂動だろうか。摂動した思考に身を委ね、どこまでも漂うだけである。

 漂白の彼方にあるのは久遠の螺旋階段にも似た空虚。

 しかし、私は摂動することを止めない。

 たとえ死が近づいてもそうなのである。

 摂動する思考は、やがて夢幻のような泡で包まれ、幻想を生み出していく。

 暫く、ガスコンロの炎の様子を見守った。

 そういえば、泡と言えば、シャボン玉は最近した覚えがないな。

 あのくらいだと、大気を包んでいく優しさしか生まないだろう。

 幻想は、悪みたいな自由にこそ相応しいのかも知れない。

 自由に幻想を抱いている訳ではなかったが、幻想に自由を抱いている。

 ―――幻想に自由を抱いている。

 ―――彼女は幻想である。

 ―――故に、彼女に自由を抱いている。

 下らない、三段論法だ。

 対極にある関係が互いを磁石のように反発しあい、ときに軋轢を生む。セミの羽のようにすり合わせながらなんとか苦労して生きなくちゃならない。そんな枯れ葉の中のミノムシのような隠れ住む必要もなく堂々といきるためにはそれなりの行動力を示さなくちゃならないだろう。

 私はそれをAir Cloud Spot...と呼ぶことにした。空の隠れ家のような意味合いで使っている。

 また、田舎じゃ隠れて住む必要がある、というわけではないが、色々と制約というものが欠かせない、という理由もあったりする。そんなLocal ruleに縛られるのもまた運命なのかも知れない。

 私はどこまでこの高校でうまくやれるのだろう。

 『Air Cloud Spotっていい名前ね。Skyplaneの溜まり場ってことでしょ?あたし、それ学校の皆に教えてあげよう。』

 彼女は勘違いしているが放って置くことにした。私には、彼女がゆくゆくは出来ることになるのだが、友達は居なかった。

 私は、勉強は理系科目は人より出来たが、英語が分からなかった。英語で書かれた理系の教科書でも読めば分かるのかもしれない。ただそんなことまでして読む気も起きなかった。

 そう、彼女と出会うまでは。

 文系ClassでTop class。そんな、清潔な空気のような、詩的な出で立ちで人を和ませる、そんな子猫みたいな彼女の名前は鴎由真。高校2年生で同い年だった。一緒の探偵小説部に所属している。探偵小説を読むのが好きだった。お昼にはCafeに行って、Pouched chocolate glasseと呼ばれる店ならではの人気商品を頼んで悦に入っている。

 Pouched chocolate glasseは、卵型のPouch状のChocolateのCoatingをあしらえたもので、そこに添え物の人参のGlasseと、Liqueurが垂らして文様を作っている一品だ。ただ、添え物の人参が彼女は嫌いらしく、いつも私が食べる羽目になるのが頂けないが。

 そんな彼女のお気に入りはEllery・Queenの諸外国を巡った一品のTitleが描かれた海外小説だった。後は密室物。密室という状況が一番理解しやすく複雑な要素が排除されているから私も読んでいて苦痛じゃなかった。

 Misteryと呼ばれるGenreに属するのだろう。

 確かに彼女ゆまには共感を持てるから、彼女ゆまと付き合った。彼女ゆまがAir Cloud Spot...を取り巻く島にいる間までは。彼女もいずれ流離うのだろう。

 点滅するように活動する存在の移動は、きっと夢という名のLightsaberによって、花火のような大鷲のごとく闇を切り裂いてしまう。

 太空を切り裂くように、同志と共に飛行機に乗って旅立つのだろう。

 そのBasecampとして存在するのが、きっとAir Cloud Spot...であることを祈っている。

 彼女諸君、幸運を祈る。

 私は、今までの想いを鵲さんのために小説に書くことにした。そして、もうひとりの彼女にも小説を書いた。意志を残すための遺言書のようなものである。

 今宵も『彼』は鼓動を繰り返すように、光を点滅して飛行していた。

 『彼女』の代わりに、Lanternが出ていた。

 虚月に満ちた光に映るのは、己の悩んできた道ではなく、己の意志ではない。唯の一介のどうしようもない人類の諦観に染まった男だった。

 

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