Not a human 『memory06』

@Maccha11

『memory06』

俺は、人間が嫌いだ。

どうにもならないくらい嫌いだ。

自身の考えを捨て、他者の考えを自分のもののように

語り、誰かを傷つけるのが嫌いだ。

自分が傷つかないように、代わりに誰かを

傷つける側に回ることが嫌いだ。

興味本位で、誰かを陥れるところが嫌いだ。

普段は、助けてやるとか言っている癖に

我が身可愛さで、誰かを見捨てるところが嫌いだ。

自分ではできないくせに、他人が失敗すると

口を揃えて批判するのが嫌いだ。

その人の本質を知っただけで、態度がひっくり返り

いきなり裏切るのが大嫌いだ。

その癖に、裏切った自分は悪くないと

逃げ続けるところが嫌いだ。

、、、嫌いなところを上げればきりがないくらい嫌いだ。

でも、そんな俺が何の因果か

人類の盾、A&Hの最強格の一人

ナンバーズになっていた。

どうしてこんなことになったんだか。

そんな風に考えながら、ビルの屋上で寝転んでいると

『北西3ブロック先の大通りにデモンズが出現しました

 対処を願います。』

不幸にもデモンズの出現を告げる通信を傍受してしまった。

「、、、気は向かないが

 自身の使命くらいは、やってやるか。」


硝煙と、焔の匂いが立ち込める。

「A&Hはまだか!?

 警察の領分じゃないだろこんなの!」

「いいから手を動かせ!」

大通り上に突如現れた女に向け、銃弾を放つ。

その銃弾は、確実に女を捉えた筈ではあったのだが

全てその体から銃弾がすり抜けており

女の顔だけが警官たちの方へクルリと回転する。

「ワタシ キレイ?」

耳まで口が裂けたその顔で、そう問いかけてくる。

その光景を見た警官たちは、我先にと逃げ出していく。

後ろに守るべき民衆が居ることすら忘れて。

「ねぇ ワタシ キレイ?」

そう問いかけながら、一歩

また一歩と歩みを進め、民衆を守っている

バリケードまでその足を進める。

「くるな、来るんじゃねぇ、、、バケモノ!」

バリケードの向こうの誰かがそう言った。

するとその瞬間

「じゃぁ、あなたはいらない。」

その言葉と共に、その男の目の前に女は出現し

手に持った包丁で、男の首を掻っ切った。

その男が息を引き取ったのを見届けると

隣にいた女に、こう問いかける。

「ワタシ キレイ?」

その女は、震えながらこう答えた。

「き、、、きれい、なんじゃない?」

女がそう答えると、その耳まで裂けた口をあんぐりと開け

「うそつきも、いらない。」

女の頭を食いちぎった。

その光景を見た民衆は、我先にと逃げ出していく。

なんでA&Hは助けてくれないんだ。

警察は、軍隊はどこ行ったんだよ。

金払ってんだから守れよ!

そんな醜い悲鳴を上げながら、蜘蛛の子を

散らすように逃げていく。

逃げる民衆の前に、瞬きの間に移動したのか

口の裂けた女が立ち塞がり

もう一度、あの言葉を口にする。

「ワタシ キレイ?」

その問いに、空から降ってきた一つの声が答える。

「顔面に銃弾喰らった方がまともになるんじゃねぇか?」

その声と共に一発の銃弾が、口裂け女の顔面を貫く。

だが、その直後にむくりと起き上がり

「じゃぁ、あなたも、いらない。」

と言う声と共に、その声の主の前まで

瞬時に移動する。

瞬間移動持ちかこいつ!

「開け 白の頁」

メビウスは、目の前に出現した口裂け女が振るう刃を

蹴り上げて受け流す。

「かわ、した?」

そう言いながら、口裂け女は首をかしげる。

「ああそうだよ、口裂け女。

 、、、つーか、とっとと逃げろそこに居る奴ら!」

ったく、人が時間稼ぎしてることすらわかんねぇか。

そのメビウスの言葉を聞き、我に返ったのか

民衆は、感謝の言葉を残して逃げていく。

「俺の正体を知ったら、手のひら返して

 バケモノと呼ぶくせに、都合がいいな相変わらず。」

そんな愚痴を呟きながら、メビウスは

目の前の敵へ向き直る。

にしてもこいつ、顔面を銃弾で貫かれてんのに

ノーダメージか?

「いらない、いらない、いらない、いらない。

 だから、死んで。」

口裂け女は、自分の攻撃を躱したメビウスに

酷く不快感を覚えたのか、持っている刃物を

無作為に振り回す。

「開け 白の頁」

ビルの屋上に、風を切る音と

何かページをめくるかのような音が木霊する。

「ウェポンラック 一番射出!」

『命令了解 一番ラック収納 ショットガン 射出』

銃弾に突っ込むとか冗談はやめてくれよ、、、?

そんなことを思いながら

メビウスは射出されたショットガンを受け取ると

瞬間移動しながら、刃物を振り回す口裂け女から

距離を取りながら散弾をばら撒く。

流石にこれだけばら撒けば、、、!

「死んで。」

メビウスのばら撒いた銃弾を、避ける様子もなく

口裂け女は、一直線に距離を詰める。

「、、、ッ、一番最悪のパターンかよ!」

白の頁で見た一番最悪の可能性が目の前に具現化する。

切り札をこんなとこで切りたかないが、、、仕方ない!

「記せ 白の頁」

一瞬、一瞬だけ落ち葉でもなんでもいいから

視界を遮ってくれればそれでいい!

途端に、口裂け女とメビウスの間に

一枚の新聞紙が風に運ばれてやってくる。

「照準ロック、この距離なら外さない。

 バーストファイア!」

視界が切れた一瞬の瞬間に、メビウスは拳銃を抜き

口裂け女の顔が来るであろう場所に銃口を置き

何発もの銃弾を一度に放つ。

その弾丸は、完全に口裂け女の顔面を捉えていた。

だが、一つ想定外があったとすれば

「じゃま。」

と言う声と共に、口裂け女が銃弾ごと

嚙み砕いたことだろう。

「なっ、、、?!」

振るわれた刃がメビウスの首を掻っ切ろうと

銀色に不気味に輝く。

回避行動、間に合わない。

迎撃行動、間に合わない。

少しでも動いて狙いをずらしても、ここまで怒らせちゃ

次が瞬時に飛んでくる。

、、、クッソ、避けられない!

そんな時だった、目の前に金色の槍が降り注ぎ

刃を止めたのは。

「こちら識別コード06ビャクヤ、そこの君

 後はこっちに任せてくれ。」

真後ろから、晴れやかな声が聞こえる。

「、、、前は任せるぞ。」

そう言い、メビウスは後ろに下がりながら

銃を構える。

「にがさない。」

口裂け女は、瞬間移動をして

メビウスの前に移動しようとするが、メビウスの後ろから

降り下ろされた刃によって、それは妨害される。

「悪いね、君の相手は僕だ。」

刃と刃が競り合うそんな状況でも

口裂け女は、ビャクヤに問いかける。

「ワタシ キレイ?」

「ツクヨミの方が綺麗だな、っと!」

競り合っていた刃を受け流し、刃を止めるために

前に掛けていた力を、刀に乗せる。

それによって、限界まで加速した刀を振るい

口裂け女を斬り上げる。

「ツクヨミ!」

「月光 貫いて」

一撃を喰らわせた後、間髪入れずに上空から

一閃の金色の閃光が口裂け女を貫く。

「ヴぁぁ!」

初めてダメージらしいものが入ったのか

口裂け女が膝をつく。

その隙をビャクヤは見逃さず

首筋に向かい、刀を振り下ろす。

だが、刃が届くより

ほんの少しだけ早く、瞬間移動したらしく

その刃は空を切った。

「ツクヨミ、足止めを頼む!」

一瞬で隣のビルまで移動した口裂け女を追撃する為に

ビルの間を飛び超える。

「任せて。

 月光 降り注いで」

突如として、口裂け女の上空に光輪が現れると

その中から、何本もの金色の光の線が降り注ぐ。

「間合いに入った!」

そこにビャクヤが辿り着き、人間の限界ギリギリの

速度まで加速し、斬撃を繰り出す。

「おい、、、ビャクヤ、だっけか?

 三十秒でいい、時間を稼いでくれ。」

「あぁ、分かった!」

振るわれる刃は、刃を以ってその力を受け流し

存在自体が凶器の口は、顎を蹴り上げて

無理やり閉じさせる。

流れるように、全ての攻撃を防ぎ

受け流し、そして自分以外に一瞬たりとも

注意力を向けられないように戦う。

ああいうのを、剣豪って昔は呼んだんだろうな。

それはさておき、始めるか。

「発射モード切替 モードdecision。 MCD連結解除

 マニュアルモードに切り替え。」

あいつの弱点は、おそらく頭には無い。

だとすると、人の形をとっている以上

心臓にあたる部分が弱点だろう。

「記せ 白の頁」

あいつの心臓が、五秒後に指定した座標に在ればいい。

「座標入力完了、ロック。

 ファイア!」

全ての法則を無視し、入力された座標に

弾丸が着弾する。

「なん、で?」

急所に命中した弾丸は、内部から対象を貫き

霊体という器が限界を迎えた口裂け女は

元から無かったかのように、消えて行く。

「、、、終わったね。」

「そうだな。」

メビウスは、今の戦闘記録を

閲覧しながら、そう答える。

「それで、君は?」

「君は、、、って?

 あぁ、コードネームの事か。」

そう言われたメビウスは、クルリと振り向き

「識別コード00 エージェントメビウス。

 今回は助かったが、俺とはあまり関わらないことを

 おすすめする。」

「悪いね、君みたいな危なっかしい戦い方をする後輩を

 ほっとける性格じゃないから、これから

 しばらくよろしく頼むよ。」

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