第2話 公共配信は踊る

『ダンジョン』と共存する世界が浸透して数十年─────。


 探索用に開発された追跡型ドローンを使い、ダンジョン攻略をする姿をライブ配信するダンジョン配信者なる者が世界中で流行り始めた世界。

 トップクラスの配信者は、世界で活躍するスポーツ選手や俳優より認知度が高いという常識が定着してしまった昨今。


 基本「いいひと」「場所が限定」「地味」と揶揄される「日本ダンジョン」。

 世界から見れば地味と言われ、映えない─────が。


 天上天下唯我独尊、そんなの関係ねぇ!と独自路線を走るところも、やっぱり「日本」であった。  

  バーチャルという名の皮を付け、自分好みの姿、形を作り出し、活動するという『Vダンジョン配信者』

 

 自分事「黒崎悠馬」は、ダンジョン冒険者になる選択肢もなく、新卒の社員という立場でありながら、新人ではまず会えないであろう会社のお偉方の面々に面談という名の集まりの中、公開処刑という名の会議に振り回された後─────。


「はい、みんな皆ちゅうもーく。映像オーケー?音声バランスいいかな~」


 映像の中ではどこにでもある三階建ての建物上部と、青空だけが映っている。  

 人はだれ一人映ってはおらず、女性の声と遠くの方からピィピィと鳥の鳴き声だけが聞こえる。

 うん、のどかだ。─────ではなく、手元に用意したモニターのコメント欄に注意を向ける。


:はーい。

:大丈夫です。

:聞こえる~

:おれ音声聞こえない

:それオマカンな

:そこどこですか~?


 よしよし、問題なくコメント欄が流れている。

 配信開始は上手くいったようだ。一部聞こえてないようだが、それは織り込み済みだ。 それを確認した後、隣にいた人物にオッケーを出す。

俺の合図に、その人物は続きを話し出した。


「はいはい。大体大丈夫のようね。講習はすぐには始まらないので、調子の悪い人は今のうちに調整してね」


:五枠の講習会場はここですか?

:あってる

:そうだよ

:そ

:ライブなんだ

:特別講習枠なの?


「いつもは収録したものを視聴してもらうんだけどね、何というか別口からリクエストがね‥‥‥‥。自分も雇われだからな‥‥‥‥」


 ─────察してくれ。

建物だけが映る画面から、何とも言えない空気が駄々漏れした。


:おん

:なるほど?

:どういう事?

:収録のでエエやん

:メンドイ

:しっ!

:黙れ

:しぃ!黙っとけよ!


 社会の柵の一端を知っている一部視聴者は、己の境遇と照らし合わせて涙した。

 空気を読めない視聴者とコメント欄でバトルが始まりそうなので、先に進めようと促す。

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