【24】寂しさが埋まる予感。
「お、おくさま……!?」
私は思わず聞き返した。
「私が??」
「はい」
「しかしですね、私は、離縁の予定を、考えておりまして」
「その事はお伺いしておりますが、旦那様と半年のお約束があるのでしょう。でしたら、それまでは奥様です」
「う……」
間違ってはいない……。
むしろ今までを改めて、このように言ってくるセバスは正しい。
しょうがない、慣れない感じはするけど、受け入れるしかない。
これまでの経緯はともかく、王命で結婚してるわけだし。
「図々しくも許して頂こうとは思っておりませんが、誠意はお見せしたいのです。……明日の夕刻、本棟でのディナーへ、ご招待させてください……そしてその時、使用人一同から謝罪をさせて頂きたいのです」
「な、なんと……ありがとうございます。ですが、お気持ちだけで……」
「いえ、ぜひいらしてください。……ところで、明日は孤児院には何時頃までご滞在ですか」
断らせてくれない!!
「な、何時……って、特には決まっておりませんが。子どもたちが全員帰ってきたのを見届けたいと思っているので、支度も考えるとディナーには間に合わないかと……」
その時、エルが口を挟んできた。
「アプリコット様、私が責任もって子どもたちは見ますので、大丈夫でございますよ。むしろ明日はお休みされてはどうでしょう?」
エルー!! にこやかに余計なことを!!
おかしい! 最近、人形達が私に逆らう!!
「どうやら問題ないようですね。では明日、準備も兼ねて別棟に侍女を数人送りますので、身支度をまかせてやってください」
「は、はい……?」
せ、セバスがにこやかだ!?
「旦那様が、奥様にイブニングドレス、その他一式を用意されましたのでそちらをお召しになって頂きたく」
「えええ、私にそんなお金使うなんて、もったいない。ドレスは何着か城から持参してありますよ!」
「何を仰るのですか。あなたはミリウス辺境伯の奥方なのですよ。しかも元をたどればこの国の姫君ではないですか。ここ数ヶ月、こういった事がなかったほうが、おかしいのです」
「は、はあ……」
確かに常識的にはそうだ。
間違っちゃいないが。
でも、放置で良かったんですけど! 私は。
「それでは、そろそろ失礼致します。明日は心からお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願い致します」
「は、はい……」
セバスは、帰っていった。
私は結局、セバスが優しくなったとしても、彼に押し切られる立場なのか……。
私、よわ……。
「リコ~、良かったね!」
「え、なにがよ……。泣きそうだよ。誤解が解けたのは良かったけど……このままホントに結婚したら、いままでのフリーダムな生活が……」
「
「ちがうよ! 寂しいんじゃなくて暇だったんだよ!?」
「そうかなー? ねえ、リコ。いくらリコが言葉でそんな風に言っても、僕たちにはリコがどうなると嬉しいか、とか……なんとなくわかっちゃうんだよ~。リコは僕たちが逆らった、と思うかもしれないけど。結局僕たちは君のちょっとした希望なんかも拾い上げてしまう時があるよ」
「ちょ、ちょっとした希望!?」
「ディナーの誘いって聞いて、旦那様と会えるんだーとか、ちょこっと思ったりしなかった?」
「お、思ってない……よ……?」
そ、そんな事は。
「サメっち、そこまでにしておけ」
いつの間にか、ニャン教授がソファーでお茶を飲んでた。
「はーい」
「だが私からも、ひとこと言わせてもらう。なあ、アプリコット。ここは王宮じゃない。後から起こるか起こらないかのトラブルを恐れるより、素直に気持ちに従ってみてもいいのではないか。……もし、そうだな。また泣くことになったとしても……私達だけはお前とずっと一緒だ。そう、私達がいる」
「ニャン教授……」
「今まで抱えてきた寂しさが埋まる予感がしているなら、何も考えず進んでみるのもたまにはいいだろう。明日の
そう言って、ニャン教授はもう一口紅茶を飲むと、自らぬいるぐみに戻った。
最近彼は私の魔力に気を遣って、必要最低限しか起きてこない。
「明日楽しみだねー。僕はついていくからね!」
「うん……」
私は複雑だった。
でも、ニャン教授の言うとおり、『寂しさが埋まる予感』がしているのは、図星なとこは……ないでもなかったりした。
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