【4】前世! 全開! リミッター解除!
解き放たれた私は、しばらく部屋の中を転げ回って一人祭りをしていたが――腹が、減った。
「ハラヘッタ!!」
もう言語だって、前世全開リミッター解除である。
前世にしたって言葉悪い方だけど。
1人の時なら別に良いよね!
「えー、ひょっとして食事も持ってこないパターン? まあ、あの侍女の顔、見たくないからいいけど玄関前に配達くらいはして欲しい、ねえ? みんな」
私は、自分の手荷物として持ってきた大きなバッグを開いた。
中には大量のぬいぐるみや人形。
「みんな、出ておいで」
私は自分の魔力を人形達に繋げる。
そう、この世界には、どういう条件でか、魔法を使える人間がいる。
魔法には様々な種類があるのだが、基本軸は火風土水等の属性魔法、精霊魔法。しかしそれ以外にも個性的なスキル魔法というものがある。
私はそのスキル魔法の持ち主なのだ。
私は、ぬいぐるみや人形に魔力を与えて使役するスキルを持っている。
そして、私自身は属性魔法は持ってはいないが、使役する人形たちは多種多様な力を持っていて、中には属性魔法を持っている子もいる。
人形達が、ワラワラと出てくる。
「リコ、ここはどこ?」
「知らないところだー」
「うん、新しいお家に引っ越したの。これからは、この家の中ならみんな自由に動きまわっていいよ!」
「わーい!」
「かくれんぼしよー!!」
「ふふふ」
動き回る人形達が可愛くて癒やされる。
この子達がいれば、他に家族なんていらない。
「あ、そうだ。ねえ、サメっち、ニャン教授」
「なぁにー(可愛い声)」
「なにかな(渋い声)」
サメっちは前世の記憶からうろ覚えで作ったサメのぬいぐるみで、ニャン教授は片眼鏡をつけスーツ服を着込んでステッキを持った紳士なぬいぐるみだ。
声が可愛いのがサメっちで、声が渋いほうがニャン教授だ。
ニャン教授の声は、もうその声を聞いただけで結婚してくれって言いたくなるくらい渋くてダンディーでかっこいい声だ。作ってよかった。
「もう夜中なのに、侍女が食事を持ってこないのよ。多分意地悪されてるんだと思う」
「えーひどい」
「それは――酷い問題だ」
「ちなみに、この屋敷の食料庫はすっからかんだったわ。だから、ちょっと本棟から盗んでこようと思う」
「怪盗ごっこ!」
「フフフ、請け負った」
「サメっち、じゃあ乗せてくれる?」
「いいおー」
サメっちが大きくなる。
空を泳ぐサメだ。
「私も失礼しよう」
サメっちが私とニャン教授を乗せて、バルコニーから空を泳ぐ――もとい、飛ぶ。
「わあ、早い早い!」
「ぎゅーーーーーん!」
あっという間に本棟の屋根の上に着いた。
ニャン教授が走っていく。
「それにしても、食堂はどこかしら。サメっち、匂いわかる?」
「わかるよー」
サメっちはとても鼻が良い。
サメはめちゃくちゃ鼻が良いと前世で私が聞いたのが影響してるのかしら?
たしか……25mプールに垂らした一滴の血を嗅ぎ分けるとか嗅ぎ分けないとか……サメ、怖っ!
屋根をテテテッ、と走って偵察に行っていたニャン教授が戻ってくる。
「開いているバルコニーがあった、こっちだ、来いアプリコット」
「わかっぱー。サメっちお願い」
「あいあいさー」
私はほっかむりをして、布で作った仮面をつけた。
もちろんデザインはゆるキャラっぽく可愛い。
――泥棒はいけないことだと思う。
けれど、一応『自分の家』のご飯を食べるのは当然の権利ですよね!
そう、この屋敷の奴らは私に飯を食わせる義務があるのに放棄したのだ。
本来なら不敬罪にしてやろう、とか思っちゃうけど、私もう姫じゃないし、そんな職権乱用は元々しない。
だからこっそりいただきまーす! まあ書類上は自分ん家の食料だ! 文句あるか!
そんな言い訳を頭の中でしながら、バルコニーからサメっちに乗ってスーッと侵入した。
――したらば。
バサッ。
――それは書類が落ちる音。
「………な、なにも……の、だ」
やっと、それだけ言えた。
そんな感じの――本日付で私の夫となったアベル様と真正面から
やばっ!!
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