お化け屋敷を抜けると異世界ダンジョンだった?!~知らないうちに異世界転移!怖がらせるにもほどがあるんじゃ?~

八月 猫

第1話 よくある学園祭

 秋晴れの週末。

 普段なら部活の生徒しかいない学校だけど、今日だけは多くの人で賑わっていた。

 年に一度の学園祭当日。

 全校生徒に加えて、外部の人たちも多く学校を訪れていた。


 校舎内は各クラスの催し物や文化部の研究発表が行われ、校舎前では実行委員会によるフリマのようなバザーや、飲食関係の屋台が並んでいる。

 屋台からは甘い匂いや香ばしい香りが漂っており、来客の人たちや生徒たちがフランクフルトやりんご飴を片手に、美味しそうに食べながら歩いていた。


 私も何か買おうかと考えたのだけど、スマホの時計を見ると11時40分。

 この後に昼ご飯を食べることを考えると、さすがに今から買い食いをするのははばかられた。


 うちのクラス、2-Aは執事メイド喫茶。

 選び抜かれた精鋭たちによる、ご主人様とお嬢様をおもてなしするという学際ではよくあるやつだ。

 私は残念なことに選抜落ちし、裏方としての雑務を仰せつかることとなった。


 一通り屋台を見て回り、あとで買いに来るものの目星をつけ終わったので、私は一旦校舎内に戻ることにした。

 交代制で業務を担当している為、今日の私の仕事は13時から最終までとなっている。

 一応はトーストなどの軽食をメニューに載せてはいるけど、メインはドリンクなので、お昼時に混むことはあまり想像出来ない。

 どちらかというと、昼食後に立ち寄る人の方が多いだろうという予測を立てており、13時以降は厚めの人員配置で臨む予定になっていた。

 それまでにお昼ご飯を済ませておけば良いのだが、万が一それまでに混みだすようなら手伝わなければいけない。

 12時には少し早いけれど、お弁当を取りに教室へと向かった。


「さーえこ!」


 階段を上ったところで後ろから私を呼ぶ元気な声が聞こえた。

 振り返ると、両手にいっぱいの食べ物を持ったかおるが階段を上がってきていた。


「それ、全部食べるの?お昼持ってきてないの?」


 右手にフランクフルト。

 左手に紙袋を抱えて、ついでにりんご飴を持っていた。

 袋の中からはチュロスが顔を覗かせており、その袋のサイズから見ても、中にはまだまだ何か詰まっているのは間違いなかった。


「ん?もちろん食べるよ?お弁当は別腹でしょ?」


 そんなの聞いたこと無い。

 お前の胃袋は宇宙なのか?


「まあ……あなたの胃袋のことだから私は構わないけど……。あと、その恰好のまま校内を歩いてたの?」


 薫の服装はふりふりのメイド服。

 あの選ばれた者しか着ることが許されない勇者の証である。


「だって休憩時間が1時間しかないから、着替えの時間が勿体ないでしょ?それにこれ、結構気に入ってるんだ」


 そう言うと、薫はくるりと優雅に回る。

 フリルの付いたスカートがふわりと浮き上がり、ニーハイと絶対領域が露わになる。

 薫たち執事とメイドは、私たち裏方とは30分ずらしてシフトを組んでいる。

 一斉に交代すると、引継ぎなどで混乱するかもという理由だ。


冴子さえこもやれば良かったのに」


「私は選ばれなかったんだから仕方ないじゃない」


「立候補すれば優先されたでしょ?やりたい人が少なかったからくじ引きになったんだし」


 そう、私はくじに外れた天運に見放されし女。

 決してやりたくなかったわけじゃない。

 これが私の運否天賦うんぷてんぷの結果なのだ。


「で、冴子はもう教室に戻るの?」


「ええ、そのつもり。早めにお昼ごはん食べておこうかと思って」


「ねえねえ、ちょっとだけ付き合ってくれない?行きたいところがあるんだけど、1人だとちょっと……行き辛くて」


 その恰好で表を歩ける人間が行きにくいとこってどこ?

 どこでも生きていけそうなんだけど?


「別に少しなら良いけど……その恰好で行くの?」


「わざわざ着替えなくても良くない?」


「いや、私が言ってるのは、その手に持っている物のことなんだけど」


「食べたいの?」


「全部その口に突っ込んであげようか?」



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