この気持ちは最初で最後

白兎白

第1話 出逢い

出会いは、アヤがミズキを痴漢から守ったことからだった。

おじさんにお尻を触られ、怖くて動けなかった私、ミズキ。

気持ち悪くて、鼻息が近くでするのが、耐え切れなかった。



---誰か助けて。



そんな心のSOSも虚しく、なにも状況ぐ変わらなかった。

涙が零れそうになった。

その時、さわさわしていた手が、止まった。


「おじさん、痴漢って犯罪だって、知ってた?」

「いてててて!!」


振り替えると、メガネの黒髪ボブの女の子が、おじさんの指に間接技をかけていたっぽい。

女の子は、


「もう、大丈夫だよ」


と小さく笑うと、大きな声で言った。


「すみません、このおじさん、女子高生に痴漢していました~」


周りに周知する。

どよめく車内。

次の駅で下ろし、駅員さんに事情を話した。

運良く、帰りの地下鉄だったので、軽く事情聴取されて、終わった。

ただ、痴漢おじさんの歯切れが悪かった。

「俺はこんな小娘なんて触ってない」の一点張り。

その時、メガネの黒髪ボブの女の子が、言った。


「今日だけじゃないですよね?毎日のように、この女の子に痴漢してましたよね?」

「あ…」


そう、私はこのおじさんに毎日のように痴漢されていた。

この子は、それを知っていて、耐えられずに正義感が働いたんだろうなと思った。

涙が頬を伝った。


ひと悶着あり、おじさんが触ったことを認めなかったので、今回は【厳重注意】となった。

私はメガネの黒髪ボブの女の子に話しかけた。


「あの~」

「はい」

「本当にありがとうございました!!」

「大丈夫ですよ」

「私、ずっと怖くて」

「そうですよね。

それより、その制服って雨音学園高校制服ですよね?」

「あ、私はアメコウ。って言っても普通クラスだから頭悪いけど」


私はおどけて見せた。


「私もアメコウ。特進クラス。何年生ですか?」

「2年生」

「私もです」

「じゃあ、タメだね」

「は、はぁ…」

「ねね、名前は?」

「私はアヤ、です」

「アヤね、了解。私はミズキ。よろしくね」


私が差し出した手を、アヤは少々警戒しつつ、握った。




そう、これが私たちの出逢いだった。




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