突然終わる世界と週末のJC
万丸うさこ
第1話 -?
『この世界の人間は、五月十三日から七日間で全員死亡します』というメッセージと、午後五時という時間。
個人名と、それに割り振られた数字。
五日前からテレビもインターネットも使えなくて、テレビもパソコンもスマホもタブレットも、このメッセージしか受け取らなくなった。
ポストには白い封筒に入った手紙が家族全員分、今日まで毎日届いていた。消印がないからポストに直接投函されたものらしい。
手紙の中身も全く同じメッセージ。個人名と、それに割り振られた数字。
電話はどこにもかけられない。恐る恐る試してみたけれど、驚いたことに110番も、119番も繋がらなかった。
逆にかかってきた電話に応答すると、手紙に書かれた数字を告げられて切られてしまう。
メールやSMS、チャットアプリに届いた内容も全く一緒だ。
我が家は一軒家だ。最初はどこかの誰かに目をつけられて、私たち家族だけが悪質ないたずらをされているのかと思った。
でも外でお母さんと隣の奥さんが話していたら、手に手紙やスマホを持った近所の人たちがわらわらと集まってきて、それでわかった。
みんな同じ状態だったということが。
違うのは個人に割り振られた数字だけ。
1~7までの数字は、たぶん一週間を表しているのだと思う。
〝1〟は一番目に死ぬ。
〝2〟は二番目に死ぬ。
そういうことかもしれないと、近所の誰かが気味悪そうに言って、全員が黙り、ぱらぱらと解散した。
学校に行ってみたら、やっぱりみんな同じ状況だった。
先生も、生徒も、みんなに同じような手紙やメッセージが届いていて、スマホもタブレットも使えなくて、全く情報が入らなくて困っていた。
みんな笑い飛ばすけれど、でも不安そう。私も不安。
ネット関係の仕事をしているお父さんはすごく大変そうだった。だけど一応電車なんかの公共機関はちゃんと機能していて、要所におまわりさんが立っているから、パッと見て混乱している感じじゃないと言っていた。
流通関係の通信システムは最低限、稼働しているんだって。漁業や航空関係の通信システムも。だけど最低限だから、飛行機は海外に飛べないし、向こうから日本にも来れないって言っていた。
それを利用して個人的なメッセージは伝えられない、とも。
でもありがたいことにスーパーで買い物ができるし、お母さんが二週間前にネットで買ったハンドメイドのワンピースもちゃんと届いた。国内の流通はしっかりしてるみたい。
海外は混乱していて酷いことになっているかもしれない。とお父さんは言っていたけれど、もしかしたらこの現象は日本だけかもしれないし、それどころか私の住んでる地方だけかもしれない。
テレビもあの言葉以外映らないし、SNSもアプリが起動しないし、ネットも全然繋がらない。
海外のニュースなんか全く入ってこない。
でも「海外で大混乱!」って暴動が起きている動画とか、変なフェイクニュースとかがないぶん、案外みんな落ち着いているかもしれない。
「誰かのいたずらよ」と、自分の言葉をあんまり信じてなさそうな顔をして、〝5〟の数字が書かれた手紙を細かく破り捨てながらお母さんが言った。
「気にするな」と、〝1〟番目のお父さんが言った。
私は〝4〟の数字が書かれた手紙を引きこもりのお姉ちゃんの部屋へ届けてから、自分の部屋のベッドに寝転んで、〝7〟と書かれている手紙を開いた。
明日は五月十三日。
〝七日間〟が始まる日だった。
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