愛する雨の雫となって

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第2話始まり

彼女とは会社から退社して、少し行ったところにある古民家の軒下で出会った。


その日は夕方から急な雨が降り続いていた。

その時、僕は傘を家に置き忘れ、半ば土砂降りの雨の中を駅まで走っていた。



走っていると、透明なカッパを着て自転車を漕いでいる人が僕を追い抜かしていく。



嗚呼、なんて無情なんだ。



僕はそう思いながら、回れ右して、先程とは反対方向に走り始めた。先程の僕を追い越していった自転車は、今朝方、駅前の駐輪場に置いてあったクロスバイクだった。


色が水色でよく目立っており、カッコ良くて、自分もいつかあのような自転車で通勤してみたいと思いながら、見ていた物だった。


駐輪場にその1台だけが置いてあった事もあって、凄く目立っていたのだ。




詰まるところ、僕は駅とは反対方向に走っていたのだ。

駅にあった自転車が、自分と同じ方向に走る理由など、それしか考えられない。特にこの土砂降りの中では、家に早く帰りたいと思うのが普通の考えというやつだろう。



今のの敵は過去のだった。



小学校の運動会や中学の体育祭ではいつも中の下くらいの走りを見せていた僕には、速く長く走るという分野に至っては土台無理な話であった。




ポケットからスマホを瞬時に取り出す。

そして、画面上のマイクのボタンを押す。


「ここから近くの駅まで。」




『道なり、300メートル右折です。』


音声が静寂な住宅街に響く。



結果、に負けた。

いや‥‥.


方向音痴は個性だと、どこかで聞いた事があるし、うん。

もしかしたら、方向音痴というのは、子供の頃に何処かしらの反動で頭をぶつけてしまい、その積み重ねで起きてしまった後遺症という名の順道障害なのかもしれない!



そうであって欲しくないけど、そうであって欲しいとも願ってしまう。本当に、、、これは治らないなのか?




そして音声に従って曲がり角を右折して、ちょっとしたステップを軽やかなリズムで渡るも、最早僕の体力は尽きる欠ける寸前だった。




高校では運動部に所属していたものの、僕のように高校から専門的にやり始める人は割りかし少なかった。


運動音痴な僕でも運動部員として何とか、大会に出場する事ができたが、初心者として経験者の足を引っ張ってしまっていたのは、ほろ苦い経験として僕の中に蓄積されている。


しかし、そんな中でも親しい友達ができたりして高校生活は思っていたよりも、ずっと楽しかった。今でもたまに、当時の友達たちとは会っていて、心の底から入部して良かったと思っていた。


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