第16話 任務:東セキュリティ本社突入
もう一度、夢を叶えるために。
そのために志願したなら、APRの暴走が原因ってことかも。
せっかく掴んだ夢を壊されたのに、また叶えようとするなんて、シャッテンには諦めない強さがある。
強い口調と言葉が時々怖いけど、アコースティックギターを奏でる彼女はとても優しく感じた。
胸が熱い。
どうしてか分からないけど、凄く、熱い。
早くこの暴走を終わらせなきゃ……――。
午前10時司令官室。
オペレーターの小林さんは少しふらつきながら窓側に立つ。目のクマは変わらずあって、薄めの化粧だけど綺麗。
小林さんの横で、逞しい筋肉が警備服からでも分かるぐらい太い調査隊の城戸さんもいる。
手を後ろに組んで仁王立ちした永嶋司令は、鍔つきの帽子を深く被って真っ直ぐ強く睨んでいた。
「東セキュリティ本社突入作戦を行う。本社近辺の生存者は安全エリアにいる。避難通路が確保でき次第、移動を開始する。調査隊が動きやすいよう社内に残る小型APRの排除を優先。城戸は」
「あぁ、APRのデータ、開発部関係の情報」
「任せた。そしてブリッツ、調査隊がコードを発見した後は君の出番だ」
コアの回収、私の、重要な役割。
何度も城戸さんのもとで訓練をしたんだから、自信、もたなくちゃ。
「はい」
「狭い場所での戦闘になる。これまでの訓練、知識を最大限に行使し、Aeyeの情報を逃すな。小林、引き続きサポートを頼む」
「了解です」
「ナハト、シャッテン、辺りの警戒を強め、APRの動きを封じるんだ」
「「了解です」」
明るさ、冷静さの声が交じって揃う。
永嶋司令は鍔を摘まんで深く被り直し、強く頷いた――。
――……いつものバン、大体無言だけど、今日はいつに増しても重たい。
城戸さんが、いるから、かな。
ナハトとシャッテンの警戒した圧が私にまで伝わってくる。
後部座席でふんぞり返る城戸さんは黙々とタブレットの画面に注視して全く気にしてなさそう。
永嶋司令は助手席、運転は小林さん。
厳ついガードテクノロジー社の名前が乗ったバンを運転する姿は、なんだかカッコいい。
「間もなく東セキュリティ本社に接近します」
合図みたいに、顔つきが変わる。
ナハトは前と同じで無表情に近い冷たい感じ、シャッテンはあんまり変わらないけど、少し力んで動く眉と瞳。
私は、拳銃を握りしめた。
バンは静かに停車する。
「よし、東セキュリティ本社突入開始だ」
城戸さんがバンを開けて、大振りで手招く。
「周りはクリアだ。正面から堂々と入っても問題ないぜ、中は未知だけどな」
今にも傾きそうな高層ビルばかり、他は瓦礫の山になって通せんぼ状態。
横たわるビルが橋みたいになって、途中で止まってる。また爆発が起きたら、安全エリアごと悲惨なことになる。
ずっしり、拳銃とか防弾チョッキが全部、いつも以上に重く感じてしまう、吐きそう――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。