夢の在処

空き缶文学

プロローグ

 穏やかな潮風と静かな海面を前にスケッチブックをぱらぱらめくる。


 どこか懐かしいアコースティックギターの音色が、漣と交じって遠くから聴こえてくる。


 今度は車輪がくるくる回る音も聞こえた。


 立ち上がって砂を払い振り返ると、金属の破片が飛び散り、黒い煙が舞い上がる残骸都市。


 風に乗って都内に流れ込んでいく潮の香りは……生焼けの臭いを飛ばした。


 途方もない現実だけど、湧いてくる希望の感情は似つかわしくないほど不適切で、不謹慎だ。


 私は目の前の光景を眺めたあと、強がりと本心を混ぜて笑ってみせた。

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