血塗られた白羽は愛を知らない
白鳥座の司書
思い出してはいけないよ
水の音がする。泡沫が散る。
ブクブクという泡と共に己の体が沈んでゆく。揺れる水面が離れてゆき、やがて周囲が闇に包まれる。
うつろな意識の中で確信したのは己の死だ。
だって深い、深い、水の底へ落ちてしまったのだから。
その時だった。
水面がザブンと波打って、誰かが池の中へ飛び込んで来た。
そして私の体を掴んで水面へと上昇する。
大きな手と体。男の人だ。
先ほどまで彼方にあった水面を突き破ると、本能的に肺へと空気が注ぎ込まれる。
「どうして君はいつも……」
男性は問題児をなだめるかの様な声で話しかけてきた。こちらよりも遥かに大柄な男性だ。彼の表情を確認したかったが、何故か上手く焦点が合わない。
私も何か言い返そうとしたが、言葉が口から発せられることは無かった。
奇妙な感覚からもう一つの事実を確信する。これは夢だ。意識を持ったまま見ることができる夢。いわゆる明晰夢。
「
耳元でそんな言葉が聞こえてくる。
はて、誰の声であったか。
ハッキリと見ることが出来ない男性の顔から周囲の景色に視線を移すと、無数の白い
細長い白い何か。植物や自然現象で生じるものではない。あれは腕だ。人間の腕。
恐怖のあまり目を閉じる。
すると、どこからともなく女性の声が聞こえてきた。
「あぁ、また雨が降っている」
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