画面の奥から愛してよ

揺月モエ

第1話 私の初恋

私は、恋なんてしたことなかった。


そして夢中になるものもなかった。でも。


「俺が命をかけてでも守ってやる」


―私の心は射抜かれた。


これは恋だ。と私は確信した。


彼の為ならメイクだっておしゃれだって頑張れる。会えないのは分かってるけど彼にふさわしい子になりたかった。


だから―


画面の奥から愛してよ。





深夜1時…私の唯一の楽しみの時間。


『ラヴィ・マジカル』の放送時間。


私は齧り付くようにテレビを見つめる。


このアニメは現実世界にいた主人公の少女がウサギの獣人だらけの世界に迷い込む。そこで彼女はウサギの獣人のイケメン達と出会い…といったありふれた内容だ。


私がこんなありふれた内容のアニメを何故見続けるかというと、私は彼に一目惚れしてしまったのだ。


始まりは友達の勧誘だった。


「モカも見てみなよ、ラヴィマジ。絶対ハマるって!」


「どうせ、ありきたりな内容でしょ?」


「騙されたと思って1話だけ見てみなよ〜、動画配信サービスでやってるから〜!」


と押されてしまったので見てみたのだ。


最初は無の感情で見ていた。


でも、とある人物の登場でそれは変わった。


その登場人物は悪そうなビジュアルだった。の割には敬語キャラなのかと最初は思ったが、彼を見た瞬間、周りが輝いて見えた。そして私はバクバクする心臓を押さえた。


彼の名は林くん。客人や初めての人には敬語、しかし慣れてくるといったぶっきらぼうな口調だけど、何だかんだ言って優しい。


そして好きな物は酒とタバコ。私はこの悪そうだけど意外といい人の彼に一目惚れしてしまったのだ。


友達は「やっぱり、林くん推しになると思ったわー、私の感は鈍って無かったね!」


推しどころじゃない。私はガチ恋というものをしてしまったのだ。


主人公(あのこ)ばかり見ないでよ。私だけ見てよ。


そんな感情を抱くようにもなってしまった。


貴方が私を狂わせた。

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