レンタル彼女

そうだ、レンタル彼女を利用してみよう。



すぐにスマホでレンタル彼女について調べる。すると色々と都合のいいことが出てきた。

俺のような大学生でも利用できるし、彼女がいると嘘をついてしまった時に、彼女として利用することも出来るという話をSNSで見かけた。俺が理想とするショートボブでスポーティーな美女をレンタル彼女のサイトで検索してみても、沢山出てくる。

こんな美女が数時間だけでも俺の彼女になるんだ。

そんなことを考えながら、女性の顔写真が載ったサイトをスクロールしていると、


「え!?」

俺は目を疑った。それは、先程の女子大学生がサイトに載っていたからだ。服装は少し異なるが、あの透き通った肌や、茶色の短い髪は間違いなくあの子だった。

しかもめっちゃ凛音に似ている。


もはや同一人物かと思うくらい似ているが、アイシャドウが違ったり化粧が濃いため、恐らく凛音では無いだろう。


プロフィールを見ると「小瀬川 泉」と書かれていて、俺と同じ大学3年生らしい。そのお店の中でもTOPレベルに指名率が高く、人気の女性なのだとか。あのおじさんに笑顔で対応できている所を見ると、なんとなく理由がわかった気がする。


しかし小瀬川って...。

なんで小瀬川 凛音と同じ名字なんだよ。


「小瀬川」という名字はそこまで日本でも多くの人はいないため、珍しいが、そういった偶然もあるのだろう。それか顔も似ているから、遠い親戚なのかもしれないなと考えた。


年齢的にも俺の彼女といって疑われることは少ないだろう。ただ、俺に不釣り合いということだけは疑われるだろうが。どうせ会うのは咲希だけだから、少しくらい美人のほうが驚くだろうし、いいだろう。

そんな気持ちで、会員登録をしてみる。


そこからは早かった。

年齢や基本情報を打ち込み、小瀬川さんの予約画面を押す。そして彼女の予約覧を確認してみると、来週の日曜日が空いていた。咲希からのメールには日曜日に彼女を見せてほしいということだったので、午前と午後の合わせて4時間予約した。


《今回はどういった理由で、レンタル彼女を利用しようと思いました?》

という項目があり、文字を打つ手が少し止まってしまった。


彼女がいると嘘をついてしまって、彼女になりきってもらうという理由でレンタル彼女を利用するなんて少し失礼ではないかと思ってしまう。自分の都合に合わせて彼女に演技してもらうなんて。

そもそもレンタル彼女として彼女になってもらうのも、演技なのだが。


だが、レンタル彼女に見栄を張って嘘をついたってしょうがない。俺は本当のことをレンタル彼女に伝えることにした。

《実は、先日幼馴染に彼女がいると嘘をついてしまいました。お恥ずかしいことに、小瀬川さんに彼女の振りをしてもらってほしいと思っています。午前中に俺のことについて話しますので、午後に幼馴染と会う時に俺の彼女として話してほしいです。無茶なお願いですが、何とかなりますかね?》


そう送ると、数時間後に


《そういったケースで利用される方は沢山いらっしゃいますよ!全く問題ないです!》

と届いた。

よくあるケースなんだ。そんな嘘をついちゃう人が俺だけじゃなくて少し安心する。

そして《当日はどんな服装が良いですかね?》と届いたので、《スポーティーな彼女を演じてほしいです》とお願いすると、《わかりました!では当日を楽しみにしていますね!》とメールが届いた。


「よかった...」

俺は安堵の息をつく。

これで咲希との嘘も何とかなりそうだな。これで俺のことを少しは見直してくれるだろう。

俺の好きな人の目の前で見栄を張るためだけに、5万も使ってしまうなんて俺も馬鹿な男だと思いつつ、健と別れ、俺は帰宅する。


スマホを開き「咲希」と書かれたアカウントをクリックした。


《来週日曜日の午後から2時間、俺の彼女と予定開けたから、お願いな》

と少しだけ罪悪感を覚えつつ、メールを送信すると、すぐに既読がつく。

少し返信に間が空いたと思ったら、

《え?まじで彼女いるの?》と送られてきた。

《ああ。とびきり美女の彼女がな!》と送り返した。勿論、彼女がレンタルなんて口が裂けても言えない。

それからというもの咲希からの返信はなく、既読無視だった。まあ十数年俺の横で過ごしてきた咲希からしたら、俺に彼女ができたというのは信じられないだろう。


改めて小瀬川さんの顔写真を見る。

「こんなにも美しい人がなんでこんな職業やってんだろ」

レンタル彼女とはいえ、パパ活や夜の仕事ではないとは言えども、こんな仕事に就いているのはきっと何らかの事情があるはずだ。

お金儲けだとか大学の奨学金を稼ぐとか、そんな単純じゃない、何かが。


まぁいいんだ。

どうせこの小瀬川さんとは4時間だけの関係だし、気にする必要なんてないよな。

俺はそう心に決めると、眠りについた。

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