まちあわせるとき

十矢

第1話 支配されたいわたしの一日

 わたしは、ときに支配されている。



 朝、目覚めると、時計をみてあぁ、今日もまた、時間に支配されて、動かないと、と憂鬱になって、動きだす。


準備をして、出かけるまでの間、何度も時計を確認して、

でてからも電車の時間を気にして、急いで歩く。


会社でも、はじまりから、おわりまで、常に時間をみては行動を決めて、昼食も何分まで、帰り道ですら、スーパーには、いつついて、家には、どれくらい。


ジャンクフードではなくて、

もはや、ジャンクタイム。


でも、わたしには、週に一日だけ、

それを接種しなくて済む。




 わたしはあなたに支配される。



 朝起きた瞬間から、それをみないで、あぁ今日は、あなたに逢う日だ、と動きだす。


ラジオをつけ、小さめに声をきくも

ほとんどは、流しているだけ

朝食をすませ、お手洗いをして、準備をすすめたら、シャワーをあびる。


シャワーをすませて、ゆっくりタオルでふきとり、着替えて、バックをさげる。


スマホをバックに入れるも

電源はオフにしておく。

玄関に向かう。


駅に向かい

来た電車にのり、

最寄りで降りてついた場所。


ショッピングセンター三階の

ベンチに座り、なにもみないで

来るのを待つだけ。



少し経つと隣にひとが座る。



「待たせましたよね?」

「平気。いつも待ってる。」

「嫌味だね?」

「違う。あなたを待ってるよ、っていう意味よ。」

「どう、違うのでしょうか?」

「いこ。」

「そうですね。」

「どこかで食べますか?」

「ううん。そのままで。」



向かう先はホテルの一室。

わたしが、あなたに支配される場所。


交代でシャワーを浴びて、

タオルだけの姿でベットに向かい、

肌を見せ合い、ベットに入る。



どれくらいからだろう?

名前しか知らないあなたに、

支配されるのをこれほど望んでいる。

ひたすら身体があなたを求めるのに、

あなたのことをなにも知らないで、

ただ単純に混じりたい。



 わたしが眠りにつき、次に朝、目が覚めると部屋にはあなたの名前と


"いつもの場所でまた会いましょう"


の書き置きがある。


そして、紙の隣には、

あなたが忘れた婚約指輪。



そっとごみ箱に捨てた。



わたしは再び"とき"に流されそうになるも、いまはシャワーを浴びにいく。


全身に暖かい気持ちと、寝る前まで重ねたあなたの身体を想いながら、来週のまちあわせまであと"六日"。



まちあわせるときに、支配されていく。



キュッと、シャワーをとめた。

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まちあわせるとき 十矢 @onething_heart

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