百舌鳥(もず)

モズ、という鳥の怪異が私の住む地域では伝承されている。


獲物の声を真似て、近寄ったところを食ってしまうというのだ。


ある日、私の親友のサヨが神隠しにあった。モズのいる山だ。


「もうサヨのことは早く忘れろ」「声も顔も忘れろ、さもなくば次はお前が奪われちまう」


大人たちは冷たい。今まで語り継がれてきた恐怖が体に染み付いているのだろう。私は1人で探しに行った。


あらかためぼしいところは探したが見つからない。心が折れそうになった。そのとき、


「助けて!!ここよ!!!」


女のか細い声。間違いない。


私は、声のする暗闇に向かって照準を合わせ、ターンと弾を撃った。


ぎぇぇぇぇ。


私は、声の主を屋敷の地下牢に閉じ込めた。

そして、サヨの声で私への愛の言葉を何度も囁かせる。


サヨの両親や婚約者は悲しみにくれているだろうが、そんなものはどうだっていいのだ。これで、これでいい。


あぁ、わたしだけのサヨ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る