「お前」

「お前」

　喧嘩喧嘩喧嘩。

　今日も喧嘩をしていた。喧嘩の原因は何かあったわけでもなく、些細なことが大きくなって喧嘩になることが多かった。

　でも喧嘩を何回もしてもお互いにすぐ謝ることができて仲直りすることができる。これがいいことなのか悪いことなのかはわからないけれど。

　今回の喧嘩もすぐに終わり料理を一緒にすることになった。

「今日は何作る？」

「そうだなー。冷蔵庫に何もないからなんか適当に買いに行く？」

「あり！行こ！」

　さっきまで喧嘩をしていたとは思わないほどの笑顔で言われこっちが恥ずかしくなってしまった。

　彼は喧嘩中は言葉が汚くなったり声を荒げたりするがそれ以外の時は子供のような人で可愛らしかった。

　店に向かい歩いている途中、彼の歩くスピードが早く「ちょっと待って」と彼に言った。

「遅いから早くしてー」

「早すぎるって！」

　ふざけたように言ったのに彼が後ろを振り返り怖い顔で「お前が遅いんだろ」

　私たちは今まで喧嘩の時は「お前」と言わないようにしていた。

　その一言で私の中の今まで必死で保たれていたものが切れるような感覚があった。

「ごめん家に帰るね」

　彼の声を聞かずに走って家に向かった。

　その後、私は荷物を全て持って自分の家へと帰った。その日以降彼と会うことは一度もなかった。

　そんなことで？と思う方もいると思います。でも私は「お前」という言葉。これは1番女性に言ってはいけない言葉だと私は思う。