同棲

椿

同棲

 仕事が長引いてしまった。彼には6時前には帰ると言ったのに仕事が終わったのが7時だった。

 上司への挨拶を終えた後、彼に連絡し、急いで家に向かった。今日は一緒に飲みに行く予定だった。お店を予約していた。なのに連絡もしていなくて申し訳ない気持ちで胸がいっぱいだった。

 家に着いた時には時計の針は8時をすぎていた。急いで部屋の中に入りドアを開けた瞬間、彼が抱きついて来た。

「おかえり!仕事お疲れ様、頑張ったねすごいよ」

「ありがとう。ごめんね連絡もできなくて」

「いいよ大丈夫。ひなが連絡よこさないなんてないと思ったから仕事忙しいんだなってわかってたよ」

「ほんとにごめんね」

「大丈夫だって!お店の人にはごめんなさいって言ってキャンセルしたから大丈夫だよ。それにさ…」

 そう言って彼が冷蔵庫の中から卵を取り出した。

「さっき買い物行って来たんだ!一緒にオムライス作ろ!果物もたくさん買って来たしお酒もおつまみもめっちゃ買ったしさ!」

 笑顔で喋る彼の顔がとても可愛くて思わず抱きついてしまった。

 最初にオムライスを作ることになり私と彼でお互いに作ってあげることになった。

 私はとても上手く作ることができた。

「ひなうますぎない?でも俺最近料理してんだからね。だから多分ひなより上手いからみてて」

 彼はそう言ってオムライスを作り始めた。彼に「ちょっとお楽しみってことリビングで待ってて」と言われ、私はおつまみを広げ彼が料理を作り終わるのを待った。

 数分した後、彼がキッチンから出て来た。彼の顔を見ると自信に満ち溢れた顔で私の方を見ていた。上手くできたのかと思いどんなふうにできたのか気になった。

「早く見せてよ!」

「はい!」

 そう言って彼が見せて来たオムライスは卵がぐちゃぐちゃになっていて下の米が丸見えだった。

 だけど彼は工夫していた。

 ケチャップで『大好きだよ!」と皿いっぱいに描いていた。本当に可愛く、「私も描きたい!」と言って彼にあげるオムライスに『大好き!』と書いた。

 同棲をしていると彼の料理を毎日食べることができる。これが最近の私の1番の楽しみ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

同棲 椿 @tubaki_lll

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ