第3話 のじゃロリ金髪女神様
で、目が覚めたのは真っ白い空間だった。
目が覚めたというよりは、変に意識がハッキリしている夢という感じだ。
「……あれ、知らない天井?」
違う。天井すらない。
ただどこまでも、白い空間が勇樹の前に広がっている。
「なんだよ、ここ……?」
ところどころ、ちょっと夢カワっぽいパステルの霞がかかっている。
呆然とする勇樹の独り言には、ちょっとエコーがかかっている。
「ちっす、当選おめでとう!」
「へ? 誰?」
気がつくと、俺の目の前には金髪ショートカットの美少女が立っていた。
美少女といっても、けっこう小さい。十才くらいか。
ギリシャ神話の神様みたいな、白い布を肩から斜めがけにしている。頭には月桂冠っていうのだろうか、葉っぱが乗っかってるし。
これ、神様だ。
イメージとだいぶ違うけど。
「神……崎勇樹……カンザキ・ユウキ? これが名前か」
「は、はい」
「確認、ヨシ! なお、我の姿と声は、万能翻訳魔法によってカンザキ・ユウキの生存していた世界の一般常識をもとに、理解の範疇かつ好意的に受け取られやすいものに翻訳されているぞ」
「それ、本当の姿じゃないんだ……」
金髪ショートカットの勝ち気なロリ(ギリシャ神話の姿)が『一般常識を元に』生成された姿形なのか……どんな常識だよ。責任者、出てこい。
いや、キャラデザとしてはかなりいいけど。
ソシャゲに出てきたら、ガチャぶん回し待ったなしなかんじだ。
「我の本当の姿を直視したら、おまえさまアタマおかしくなっちゃうぞ」
「あ、そういうかんじ?」
っていうか、あれだ。
俺、やっぱり死んだんだ。
こうして神様にエンカウントしてるし。
勇樹は頭を抱えた。
「っていうか、当選って?」
「うむっ。人助けのために死んだ魂のなかから抽選で、別世界につよつよの存在として生まれ直す権利を進呈しているぞ」
「転生ってことか」
「お、話が早いな。おまえさま、本当に縁もゆかりもない人間を助けるために死んだから、けっこう高ポイント」
「つよつよって……?」
「いわゆる、おまえさまの世界でいうところの『チート』ってやつだな。欲しい能力があればくれてやる、戦闘特化も生産系特化もどんとこいだ!」
つまり、特別な能力や才能をこの場で貰って、異世界でやり直せるってわけだ。なんて、おいしい展開か。
しかし、勇樹はちょっと考え込んでしまう。
「うーん……才能って言っても、それを活かせるかどうかは別だよなぁ」
俺の自慢の弟と妹は、たしかに才能があった。
けれど、彼らがその才能を活かしていっぱしの者になれたのは、たゆまぬ努力があったからだ。それを勇樹は知っている。
実力と結果がものをいう世界に身を置いて、それでも努力を続けるのは並大抵のことじゃない。……自分には、とてもできない。
「ほれ、どんな力が欲しい?」
「……いや、いいです」
「へ?」
「丈夫な体だけいただければ十分なので」
「謙虚すぎるっ!」
金髪ロリはひくっと頬をひきつらせた。
とはいえ、意見を変えるつもりはない。アラフォーにもなれば、身の丈くらいはわかるもんだ。
「うーむ、じゃあ……本当にいいんだな?」
金髪ショートカットの勝ち気なロリ(ギリシャ神話の姿)もとい、女神様は最後に念押しをしてきた。
「こっちでもコントロールできないことはあるから、それはご了承のほどを!」
転生する場所、時間、家庭などは神様といえどもコントロールができないのだとか。
必ずしも母体から生まれるわけじゃないらしい。なんだそりゃ。
「大昔、桃の中とか竹の中とかに当選者を転生させちゃったバカ女神がいたから、物理的にヤバい場所に生まれ落ちることはないようにってガイドラインが変わったはずだ。そこは安心しておけ!」
「えええ……」
さすがに次に目が覚めたら植物の中に閉じ込められていた、とかは勘弁してくれ。っていうか、各種童話ってそういう話だったのか?
金髪ロリ女神が、虹色の光を放つ。
まばゆく美しい光に目が眩む。某ゾウさんが主人公のアニメ映画の某シーンが「まさにあんなかんじ」だと噂に聞く、よくないオクスリによる
「さらばだ、カンザキ・ユウキ! 達者でな!」
思わずぎゅっと目をつぶる。
「我のコントロールできない、前世の徳ポイントによる能力は生まれてみてのお楽しみである! 以上、転生面談……完!」
あ、そういうのもあるんすか。
勇樹がそうツッコミを入れようとした瞬間。
今まで存在してた、あらゆる五感がすべて消えた。
ぶつっと、唐突に。
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