第3話 休息そして出立

 コルム中尉の好意で、砦で休息を取らせて貰った。

 中尉は戦後処理で、当分砦に残るらしい。

 あゆみは褒賞金から、農村で荷馬車を利用させた者に謝礼をしに出かけた。

 前世でラーメンを食べながらテレビで黒沢監督の時代劇で農村映像より、貧しさを感じる。

 農民は痩せ細り、その日食べるのも大変な生活に見える。


 ホルン少尉からソルラン国の現状も聞かせられた。

 どうもソルラン国は、戦力には反対のようで、各国とは対話重視で解決ができると考えるらしい。

 お飾りの騎士を配置した程度で、戦力には無関心。

 それでも周辺国とは、荒事も対話で解決してきたという。

 しかし、ユンド新国王になると、徴兵制がより強化され、軍事力に力を注ぐようになったという。

 ソルラン国とユンド国の国境で、ソルラン国領付近でもめ事があちこちで起きるようになった。

 徐々に、ここがユンド国の領土だと主張し出し、軍事侵攻をちらつかせ始めた。

 ソルラン国は対話でと使節団を何度も送ったが、一向に解決がつかず、周辺国にも助力を願ったが、なかなか捗らなかった。

 そのうちユンド国の武装農民の一団が、ソルラン国の一部を強制割譲した。

 ソルラン国は対話で交渉したが、ユンド国は軍隊で割譲したのではないので、手段がないと言い張った。

 ソルラン国には自衛力はほとんどないく、対抗しようがない。

 自衛力の予算には反対する者が多く、話し合いの解決を要望した。

 割譲されたソルラン国の領主は、何とか取り返したくても、対話以外に対抗する手段がない。

 交渉も進展しないまま。

 ユンド国の偽装農民達は、少しつづ土地を拡大した。

 何度もソルラン国は抗議したが、ユンド国側は無視。

 暫くして、今度はユンド国軍が割譲した以上に、ユンド国軍が突然進軍した。

 ソルラン国ノエノ領の五分の一を奪われてしまった。

 やっと、ソルラン国は防衛力の必要を感じ、少ない予算で小規模の軍隊を編成した。

 あくまでも防衛という大義名分なので、士気は低く、指揮官も育たない現状。

 あゆみはホルン少尉の話を聞いて、何処かの国に似ているなと感じた。

 あゆみが焼いた砦周辺も、元はソルラン国だったとは。

 領土を維持できない国の国王だと。

 現状維持の防衛体制とか。

 ソルラン国の先行きは滅亡か、従属か。

 

 あゆみはここ三日ほど休息し、出立を決意した。

 ソルラン国の隣のカルーム国を目指すことにした。

 できるだけユンド国方面に近づかないように、道を進める。

 乗馬なので、何処となく速めに、カルーム国に辿り着きそうだ。


 途中、農村も町も見かけない。

 小動物がいるので、食には不自由しなかった。

 だが、野宿を10日目だときついというより苦痛に近い。

 このまま宿での宿泊もない生活に耐えていけるのだろうかと。

 この世界の順応は難しいそうだと。

 ムショですら、衛生状態はよかった。

 トイレ常設、風呂は夏週3回も浸かれた。  

 宿泊しながら、各国見学は、想像以上に厳しいのかな。

 

 やっと耕作民の家を見つけた。


「おい、誰かいるか!」

 確かに人の気配はするが、出てこようとしない。


「おい!」


「・・・・・」


「じゃ、勝手に、メシでも探して、喰うか」

 あゆみは、ボロ屋敷のボロの土間付近を探す。

 ヒエか?、

 アワか?。

 この世界、健康志向なのかと。

 まあ、いい、食べれば、それでいいかと。


 あゆみは土間で火を熾す。

 木片を細く切り、金属を擦って、火を熾した。

 隠れ潜んでいた者が、

「器用ですね。

 こうも簡単に火を熾すなんて」


「ああ、こうやって、熾すのよ」

 近づいてきた男に教える。

 男があゆみから渡された金属を擦った。

 確かにヒバナが光った。


「メシでも喰うか?」

 あゆみは言う。

 男が笑い出す。

 あゆみの言い方が、よほど面白かったようだ。


 外の者達も安心したのか姿を現した。


 土鍋でアワに野菜をぶっ込んで、味のない食事をみんなとした。


 男は何処から来たのか、尋ねた。

 確かノエノ領といったようなので、その名を出した。


「随分と遠いですね。

 これから、どちらへと?」


「カムール国へとな」


「ここはガルミ領ですが、先には山賊の縄張りで危険ですよ」

 この耕民一家は5人だった。

 

 あゆみは寝る場所を申し出た。

 男は、どこでも好きな場所で、寝ればと」

 あゆみは用心しながら、寝た。


 翌日早々に出立した。

 銀粒1粒を床においた。



 山道を進むと、誰かに見られているような気配がする。

 そのうち、矢を射ってきた。

 警告か。

 あゆみは矢の射った方向に、矢を射ると、木から人が落ちてきた。

 周辺から賊らしき5人が出てきた。

「全部、おいていけ!」

 あゆみは下馬して、剣を抜いた。

 それからは、速度の勝負。

 次から次へと斬り捨てて行く。

「お助けを!」

 首筋に剣を突き立てられた男が命乞いをする。

「お前ら、全部で何人だ」

 あゆみは重傷者にトドメを刺す。

「35人です」

「どこがアジトだ」

「向こうの山の洞窟です」

「そうか」

 あゆみは全員殺した。


 山賊狩りか、殺せる。

 いまの余韻が何とも言えない快感。

 山賊の通った道を辿っていくと、遠くで煙が上がっている。

 やっと、洞窟が見渡せる場所に着く。

 洞窟の前には馬車、薪がある。火だねがある。

 見張りらしき者も数人いる。


 洞窟の上の岩を落として、馬車や薪で火をつけ、焼き殺すか。

 燻り出てきた者を斬り捨てるとか、考えると高揚感があがる。

 そう作戦を考えると、さっそく行動を開始。

 洞窟の上に辿り着くと、岩盤先を剣で掘る。

 傾斜なので、岩が堕ち、小石もつられて堕ちて行く、

 急いで、降りて洞窟周辺の者達を斬り伏せていく。

 馬車を洞窟前に移動させ、薪を放り込み、後は火だねに木を足し、燃えた木を洞窟の方へ投げ込む。

 徐々に馬車が燃えさかり、薪も威勢良く燃える。

 洞窟から叫び声が上がる。


 前世で男女を縛ったまま、憎悪で焼き殺したけど、


「助けてくれ!」

「ざんざん悪事をしたのだから、本望だろう」

「どうか、手下になるので、お助けを」

 面白いことをいうなと、あゆみはにやりと笑う。



 

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