【第一話完結】《ワルプルギス・オンライン》

枢ノレ

プロローグ

 ゲームというのは、つまり勝負だ。


 それは世界最古と言われるボードゲームでも、カードでも、最新技術の粋であるVRゲームでも変わらない。


 自分の意地、滾る想い、技術――全てを賭して相手と競い合う。そういうものだ。定められたルールの中で、死力を尽くす。そうして得る勝利こそが、そのゲームにかけた真摯な情熱を栄光にする。


 そこに不正の入る余地はない。あっていいのはルールに準じたプレイヤースキルによる技術介入のみ。


 試合を前に備えないボクサーはいない。練習を重ね、球速と球種を兼ね備えた投手がエースナンバーをつける。


 ゲーマーだって同じだ。ルールを熟知して、コンボを磨き、あるいは有利不利を覚え、対策を練る。


 資質、才能――これもプレイヤースキルのうちだ。


 俊足のサッカー選手、高く跳ぶバレー選手――練習だけでは到達し得ない領域に踏み込める者こそギフトを与えられた天才であろう。


 そして、この俺も――才能を与えられた天才だ。ゲームの天才。アナログゲームでは発揮し辛いギフトだが、それでもゲームと言えばフルダイブVRが当たり前の現代で、俺は間違いなく《与えられし者ギフテッド》と言えるだろう。


 俺の目に見えないものはない。それが俺に与えられたギフトだ。


 この力で、俺は数多のゲームを究めて――そして、その経験を活かしていつか、至高のゲームを作る。この俺でも簡単に攻略できず――しかし真摯な情熱をもって挑み、そして乗り越えたときにはこれ以上ない達成感と満足感を得られる、そんなゲームを。


 そのためにも学生である今は最先端の、そして優れたゲームをプレイし、最高の体験をしたい。


 目下、俺が攻略に勤しんでいるタイトルは《ワルプルギス・オンライン》だ。

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