5:うちの子も結構やんちゃのようで
「ふむ」
私はキリウスが掴んでいた剣をまじまじと見つめる。
「原因はこれだね?」
見る者にはよくわかる、禍々しい気を放つ剣。
キリウスは、親のひいき目はあるのだろうが精神力が強い。
そんな子の精神に干渉する魔剣と化したこれが、この惨状を起こしたのだろう。
怪異の原因が分かっていたから、魔剣を持って単独行動に出たのだ。
……助かるものだね。
キリウスの精神力はアルエットやサトラよりも上だ。
あの2人はキリウスほど強固な自我を持っていない。ランダム憑依してもヤツラから逃げるので精いっぱいで、あまりに弱すぎる。
……まぁ、子供にはこんなものは酷だ。
「さて、さっさと終わらせるかね」
魔剣を構えて呟くと、周囲の空気が一瞬にして重くなる。
それに呼応するように霧が一層深くなって視界を塞ぎ始めるが、私に迷うことなどない。
直感のままに剣を振るい、霧の中を進む。
「うん……うん。まずは暴れ狂う呪いを鎮めればいいか」
母子の縁なのか、キリウスの身に起きたことはある程度この身体に残っており判断がしやすい。
キリウスと剣にまつわるあらましを私に教えてくれるのだ。
「あの子も大変だったんだねぇ」
キリウスは、魔法探検俱楽部という胡散臭い学園サークルなるものに所属している。
ハンク家で使われた無名の剣が、この町に保管されていることを聞きつけた部長とやらが、クラブ活動?とやらでサークルメンバーを連れてきた。
……短期間で随分と娯楽が発展したものだ。子供だけで遠くの地で遊べるなんてと、半ば感心しながら私は思案をやめない。
「当主でない、無名の娘の剣なら安全かと思ったのかね……。これは大ハズレさ」
これはアルエットの剣だ。
あの子は恨みの念など残しちゃいないが、無辜の魂に纏わりつく存在がまずいのだ。私が手をかざすと、剣はザワザワと蠢き立つ波動を感じた。
この剣が元凶であり、呪いを溜め込む器でもある。
剣の破壊は得策じゃあない。
「と言っても、このまま放置も出来ないか」
まずは、この剣を求めて集う悪意の怪物を散らさねば。
「私ぁ、ノワールやリューマのような器用なまねはできないがね」
出来る事は限りがある。
勿論、キリウスも似たようなものだ。
「キリウスが仲間と別に行動していたのは大正解だよ」
キリウスは呪いの耐性が高い。芳醇な撒き餌を放つこれを手にして外敵を蒔く程度は問題ない。
それと直感で判断したのだろう。
奥の手は使わずにこの呪物の対処をせねばならないと。
「ここまで狂気の思念に染まっているんだ。狙いはハンク家の縁者だけじゃ済まないからね」
あの子の奥の手とヤツラが混ざりでもすればどうしようもない。
だが。
「だからといって、無茶をしてからに」
私の魂がこの身体に馴染んで来てから、鈍っていた痛覚が呼び起こされる。
アバラに鈍痛が入るし、口の端も切れているじゃあないか。
「さて……」
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