第4話お互いの容姿
お互いの容姿を見て驚いた。
醜かったわけではない。むしろ双方共に美しすぎて目が離せないくらいだったのだが……
その美しさが特異で対極的だったということ。
夜霧の髪は蒼く綺麗なセミロング。目は、切長で瞳の色は、鮮やかなエメラルドブルー。肌の色は透き通るほど白かった。顔全体は小さくて鼻筋が通っていて意思の強さが感じられる。
千歳の髪は紅く、ゆるふわウェーブのショートカット。目は大きめで少し垂れぎみで優しげ。瞳の色はサファイアを思わせる真紅。肌の色は浅黒い。顔全体は夜霧に比べるとやや大きく、鼻筋は通っていて中性的な印象。優男と呼べなくはない感じの美少女である。
「その髪と瞳の色……」
こう言い淀んだのは千歳。
「そっちこそ……」
この地には、ある伝承があった。
〝世が乱れた時、滝野には蒼き髪と目の女が産まれるだろう。そして鷹山には紅き髪と目の女が産まれる。両者はほぼ同時期に産まれ、共に世を変革できるほどの特異な力を持つが……その2人を決して交じらわせてはならない〟
この伝承では……2人がどのような特異な力を持つのか、なぜ2人を交じらわせてはならないのか具体的なことは述べられていない。問答無用で、〝ならぬものはならぬ〟という感じである。
「拙者達、〝交わってはならない〟のでは?」
「今こうして、会って話をしているのだけど?」
「何が起こるんだろう?」
「さあ? 今現在、何も起きていないですし、会ってしまったものは仕方ないのではないかしら」
「……さすがは、夜霧。豪胆!」
「千歳はどうしたいのですか? まさか、〝もう会わない〟とか言い出すつもりではないでしょうね??」
「……いや。〝御神木の下でくらい政敵の娘だとか姫だとかいう立場を忘れて対等に気兼ねなく楽しみたい〟と言ってくれた夜霧の言葉がとても嬉しかったし、これからもそうありたい」
千歳は、夜霧の頬に手をやり優しく撫でながら言った。
夜霧は、くすぐったそうに目を細めながら、
「なら、そうしましょう。櫛の件なのだけど、何度も見て回ったのに、それらしきものは城に落ちていなかったわ。誰かが拾ったのかもしれない。城内のものが持ってないか探してみようと思うのだけど櫛の特徴を教えていただけないかしら?」
夜霧は、千歳の髪を指ですきながら言う。
「ああ」
静寂な神木の下、満月と焚火の光が2人を神秘的に照らしていた。
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