第4話(改訂版)

 ――翌日。

 朝起きてすぐ、朝ご飯を食べる。ものすごいスピードで歯磨きをし、自分の部屋へ向かう。これも、小説を書くためだ。

「……よし、やろう」

息を吐いて、心を落ち着かせる。……うん、今なら書ける。

 それからどれだけ書いていたのか。時間は覚えてないけど、書いたのは六ページ。

 でも、私は重要なことを忘れている。…それは、今日が平日だということ。学校に行かなければいけない。なのに、もうこんな時間……。

「……いっけなーい!遅刻遅刻ぅ~!」

パンを口に咥え、出発する。いや、遅刻したときってパンを咥えなきゃいけない「お約束」ってやつがあるじゃない?あと、曲がり角で転校生とぶつかるためのおまじない的な?……でも、家を出発してから三十秒後にそのことに気づいた。

 ――あ、かばん忘れた。

「鈴香、小説のほうは順調?もしかして、諦めてないよね?」

「もっちろん!遅刻したのも、小説を書いてたからなの」

「…小説を書いただけで二限目まで遅刻する?」

 …はい。本当は寝てました。いや、書いてたけど…。

「ま、いいよ。応募締め切りまではまだまだあるし」

その優しい言葉とは裏腹に、ナイフのような鋭い目で私を見てくる。

「アッ、ア、ゴメンナサイ」

あさひの怖さに変な声が出てしまう。

「……それで、何枚くらい書けたの?」

「ええーっと、原稿用紙六枚くらいかな」

「ふうん。鈴香にしてはよくやるわね」

あのー、あさひさん。一言余計だってことに気づきませんかね?

 まあ、あさひに褒められたしいいや!そう思い、三限目の授業に挑むのであった……(まあ、その一分二十九秒後にやる気をなくすんだけどね)。

 ――それから、長い時が経った。

「あっさひぃ~!小説、できた!」

「えっ!おお、えーと、よかったじゃん?」

「だからさ、読んでよ」

 私は、急かすようにしてあさひに印刷した原稿を押し付ける。

「これって、短編小説だから二十枚だったよね?」

「うん」

「じゃあ、今日中に読めるか。明日返すね」

よっしゃ!とりあえず読んでもらえる!

 ――翌日。

「読んだよ」

「感想は?」

「ちょ、ちょっと待ってよ。急に言われても困るし」

「じゃ、シンキングタイム一分!」

 あさひの怒涛の文句ラッシュが聞こえるような気がするが、ただの雑音だから気にしない。

「で、どう?」

「…正直に、言うよ?」

「アッ、ハイ」

「単刀直入に言うけど、面白みがない。もっと笑える文を追加しろ。主人公に感情移入できない。あのね、これじゃただの知らないおばさんから聞かされる人生の苦労話なのよ!」

あさひの言葉のナイフがグサグサと胸に突き刺さる。

「ま、まあ、もっと頑張ってね、ってことだよね?あ、あさひ、やっさしい~!」

棒読みにならないように気を付けて言った。

 ……でも、まあ、そう考えたら前向きになれたぞ!私は思わず走り出した。

「ちょ、鈴香~~~~!」

 ま、この後ここが学校ってのを忘れて廊下で滑って転んで大怪我したっていうのはまた別のお話。私たちの挑戦は続く――。



【この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません】

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