第3話(次回が最終話かな?)

 …にしてもなあ…どこから書いたほうがいいかサッパリわかんないや。家で検索してみよう。

―――放課後

 課題は無視してレッツ検索!「小説 書き方 コツ」っと。えーっと、「ターゲット層を絞る」…子供かなあ。私も子供だし、子供並みの文章しか書けないでしょ。次は、「登場人物の設定」かあ。いきなり文章書き始めたら駄目なんだ。まず、主人公の性別は?やっぱり、自分と同じ性別のほうが書きやすいかな。高校生にしよう。性格は、あまりに真面目過ぎてもリアリティがないから面倒くさがりの友達思いにしておこう。あ、名前を忘れてた!名前は「佐久間結香(さくまゆいか)」に決定!我ながらよき名前ではないか。よし、じゃあ友達にいこう。友達も女子高校生。性格は…貧乏な家の子だから、あまり眠れてないよね…。おっちょこちょいってことにしておいて、あとでその秘密がわかるようにしておこう。名前は「三井千歳(みついちとせ)」はどうかな。よし、決まったー!…「身近な場所」を舞台にすればいいのね。大丈夫。友情を描く作品だから、舞台は学校だよね。じゃあ、執筆にとりかかりましょ。あー、執筆ソフトは「ミライノート」にしよう。私も使ったことあるし、操作が簡単だもん。一回、構成をノートに書こう。そのほうが書きやすいんじゃないかな。「結香と千歳が大人になってカフェで会う→昔を振り返る→高校生の時の視点→結香と千歳が普段通り一緒にしゃべる→千歳が先生に呼び出される→千歳に何があったか聞くと、『万引きをした』と言う→結香が否定する→千歳が止める→千歳が少年院に入る→千歳の家を訪ねる→生活が苦しいことを知る……」あれ?終わりはどうしよう?もう一回「現在」に戻って終わる?じゃあ、高校生時代の話の結末は?えーっと、千歳と結香が面会して、なんかいろいろあって千歳が泣き崩れるとしよう。それを結香が「気づいてあげられなくてごめんね」って言うでしょ?で、面会の時間が終わって、「現在」に戻る。よし、これでいいんじゃないかな。あ、「現在」のほうの終わりを考えてなかった。千歳が「あの時は本当にありがとう」的なことを言い、終わる。うん、これでいこう。

「疲れた~っ…。まだ応募締め切りまでは十分時間があるから、今日はこれで終わり!」

そして、私の視界がだんだんとフェードアウトしてゆき……―――。

「鈴香―!起きなさーい!夜ご飯もう作ったからね!」

 階段の下のほうからお母さんの声が聞こえる。起きるのはいやだけどご飯のためならなんだってできる女子中学生、それが私、伊藤鈴香だ!

「はぁーいごきげんよう。おいしそうなご飯ね」

「今日、佑太の野球の日だったでしょ?唐揚げにしちゃった

「ありがとう!!」

「姉ちゃん、俺の分も残せよ!いっつもすごいスピードで食べるから無くなるんだって!」

「あんたが早く食べないから悪いんでしょ?男ならもっと食べなさい!」

まったく、弟はわかってないな。そんなにのろのろと食べてたら、あっつあつのご飯が台無しじゃないの。何のためにご飯をあっためてるのよ!

「いっただっきまーっす!」

やっぱり最初は唐揚げだな。三個とって、一個を口に放り込む。同時にご飯を口の中にかき込む。ちょっとばかり口が疲れるが、なかなかおいしい。

「お母さん、うまいよ、これ!」

「鈴香、人に勧めるなら人の分もちゃんと残してほしいんだけど」

ぎくっ。その間も唐揚げを食べ続ける。

「ちょっと、一人六個までだぞ!」

「ふぉんあみふぁんふぁっふぇふぁふぇふぇふうぉみ、ふぁあうふぁふぇふぁいふぁふぁい(こんなに頑張って食べてるのに、わかるわけないじゃない)」

「姉ちゃん?何言ってるかわかんないんだけど」

食べてる途中に数を数えろっていうほうが間違ってるのよ!まったく…。

「ごちそうさまでしたー!」

「母ちゃ~ん、また俺の分無くなってるんだけど~」

ゆっくり食べるほうがおかしいんじゃない?なのに、残せっていうのはひどいわよ!唐揚げが泣いてるわ!

 …でも、最近お腹が出てきたような…。いや、これはあれよ!思春期は太りやすいんじゃないの?

「あのなあ、鈴香。なんでも思春期のせいにしてるとダイエットチャレンジのビフォーのほうになっちゃうぞ」

「お父さんは黙ってて!」

いいじゃないの、ダイエットチャレンジ、やってやるじゃないの!ああ、じゃなくて。今の私がチャレンジするのは小説のほう。

 お風呂を出て、ベッドに入る。

 私は、本当に小説を書きたいの?ただの賞目当てじゃない?いや、私ならそれもありえる。…でも、私は小説が好き。小説を書きたい。小説を書こうと思ってる。…うん、これでいい。

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