小説、書いてみようよ!

emakaw

第1話(というか、今の時点で書き進めたところ)

「あさひー!私、小説書いてみようと思ってるの!」

 朝の校舎で、私は大声であさひに話しかけた(…いや、「叫ぶ」のほうが正しいのかな?)。あさひが慌ててこちらに寄って来る。

「鈴香…あのさ、静かにしてくんない?」

静かに殺意を放つあさひの目。

「…はい」

さすがに、その時のあさひには逆らえなかった。それから、あさひと黙って教室へ向かった。

「…でさー、小説書こうと思ってるんだけど、どう思う?」

「鈴香、人の話聞いてた?」

「うん、聞いてたよ。それでさー……」

もうあきらめた、というように肩を落とすあさひ。なにも、そんなにオーバーにやらなくても…。

「で、サイトに投稿して、そのサイトでやってるグランプリ?みたいなやつで賞とりたいのよ」

「でも、鈴香は飽きっぽいから続かないでしょ」

そうなんだよなー…私、飽きっぽいから…。でも、私の小説に対する愛は誰にも負けない!

「小説って愛だけじゃ書けないの、お分かり?」

私の気持ちを見透かしたかのように言うあさひ。いいじゃないの!それでもやってやるわよ!

「…鈴香、どうしたの?頭から煙が…。ゴホッゴホッ」

ちょっとばかり、闘志を燃やしすぎたようね。ごめんなすって?

「まあ、というわけで私が困ったらアドバイスちょーだい!」

「あのねえ、人を道具のようにこき使……むぐっ!」

それ以上は私の好感度にかかわるのであさひの口を手で押さえた。

「とにかく、お願いね」

「…分かりました!」

 授業中、私は全く集中していなかった。まあ、いつもそうだけど。その間、ずっと新しい小説のアイデアを練っていた。…こんなに授業の時間を有効活用したことがあるだろうか?いや、ない!(恥ずかしくないのか?)

今のところ、まとまったのは…「ミステリー→頭が悪いから無理! ファンタジー→好きじゃない エッセイ→小説の中に入る? 消去法で日常系!!」ってところかな。なんだろう、これ…。消去法で決まったやつって、書きたくないんだけど。でも、中学生の私にはこれがちょうどいいんだよね。

「あっさひぃー!」

「なんですか」

「一応、テーマは『日常』に決まったんだけど……」

「ねえ、それっていつ決めたの?…まさか、授業中じゃないよね?」

ギ、ギク。あさひ…鋭いわね。

「まあ、成績優秀な私には、これくらい三分で考えられるんだけど…」

「そこまでよくないよね。あと、それだったら私に頼る必要はないといってもいいと思うんだけど」

なんて恐ろしい子。こんな子、産んだ覚えはないわ!…産んでないけど。

「で、日常ってどういうのを書けばいいの?」

「そんなに私に頼ってばかりいると、作者の欄に『伊藤鈴香・静川あさひ』って書かなきゃいけないけど、いいの?」

「本名じゃないし!ペンネームだし!」

あさひが、「そこ?」っていう顔で、私を見る。ええ、そこよ、そこ!

「もういいわ。…日常系ね…。そこから、さらに細かいジャンルに分けられるんじゃない?家族とか、友達とか、学校とか……」

「…そうか!そうだったんだ!あさひ、ありがとう!!」

何かひらめいた…気がする。いや、こういうときって、何かひらめかないといけない「お約束」でしょ?

 とりあえず、何かをひらめかせてみる。うーん…とりあえず、細かいジャンルを書き出すか!えーっと、「家族・友達・学校・部活・勉強・遊び・おかし・食べる・お肉…」ん?なんか、どんどんずれていって…。書きやすいのは、「友達」かなー。あさひをモデルに書いたら、主人公にいいアドバイスしてくれそうだし。じゃあ、どんな小説にするか…。小説を書くとか、ゲームを作るとか、大食い選手権に出るとか…最後のは、なしだな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る