踊り場の先

箱女

導入

　横浜といえばみなとみらいや中華街が思い浮かぶでしょうか。あまりにも知名度が飛び抜けすぎていて、それ以外は知らないという方もいらっしゃるでしょう。各地にお住まいのみなさんもそれぞれ似たようなシンボルマークをお持ちかと思います。

　そして同時に、市内と市外で知名度が驚くほど違う駅や場所というものが存在するかと思います。もちろん横浜にも同じように知名度にずれがある駅がいくつか点在します。舞台はそのうちのひとつ、上大岡。

　上大岡を説明するとなるといくつか案があがるかと思いますが、そのなかで最大のものといえば京急百貨店になるでしょう。大型の駅ビルです。さらには京浜急行線の特急および快速特急の停車駅であること、ほかにも市内で有名な高校の最寄り駅であること、そもそも連絡口をいくつも持つ地下鉄やバスロータリーを抱えた交通の要所であることも特徴と言えるかもしれません。

　駅から出ると目の前に鎌倉街道が通っており、複数車線をまたぐと商店街、さらに先へ進むと住宅街へと入っていきます。

　駅側から見たその商店街の右側には『camio』という商業施設が存在します。ドーナツ店やカラオケボックス、喫茶店がまず目につきます。中に入っていくとスーパーマーケットも店を構えており、休憩をするのにも遊ぶのにも買い物を済ませるのにもこの施設があればじゅうぶんなのかもしれません。テナントによっては高校生のアルバイトも募集があるようで、近くのM高校の生徒は放課後に働くことを考えているかもしれません。

　M高校。生徒の下校方法はおおまかに三つあります。京急線で帰る。バスで帰る。そして、地下鉄で帰る。ああ、地下鉄を利用している生徒がひとり下校しています。