第24話 ソフィーの魔法適性(属性)
早速シスターメアリーに、俺とソフィーが生活魔法をマスターしたことを伝えた。
シスターメアリーは、子供のソフィーが魔法を使えることに驚いたが、『これも精霊様の祝福に違いない』と喜び、ソフィーを褒めてくれた。
そして、俺とソフィーは、シスターメアリーの勧めで冒険者ギルドへ向かっている。
冒険者ギルドで魔法の適性――どんな魔法が使えるのかを調べてもらえるそうだ。
それも無料!
冒険者ギルドへ着くと、俺はソフィーを抱っこして受付にダッシュした。
受付には顔見知りのモナさんがいる。
「モナさん! 聞いて下さい! ウチのソフィーが魔法を覚えたんですよ! 生活魔法を全て使えます! 凄いでしょう? きっと魔法の天才に違いありません!」
「リョージさん! 落ち着いて下さい! わかりましたから! わかりましたから!」
俺は夢中で話してしまった。
モナさんは苦笑いだ。
「まあ、リョージさんの気持ちはわかりますよ。子供が魔法を覚えるのは、まれですからね。確かにソフィーちゃんには、魔法の才能があるのだと思います」
「でしょー! ソフィーは凄いな~!」
「えへへ」
ソフィーが照れ笑いする。
モナさんが再び苦笑い。
「いや、まあ、良いんですけどね。リョージさんの親バカっぷりが見られて良かったです。さあ! ソフィーちゃん! 魔法の適性を調べましょうね?」
「はーい!」
俺はモナさんの言葉にビックリした。
俺とソフィーは、親子ではないのだが……。
まあ、親子に見えるほど仲が良いということだろう。
モナさんは受付カウンターに大きな丸い金属製のお盆が置かれた。
「さあ、ソフィーちゃん! ソフィーちゃんが使える魔法を調べるからね。このお盆の真ん中に手を置いてちょうだい」
俺は抱いていたソフィーをカウンターの椅子に座らせた。
ソフィーは、興味津々の様子でお盆の中央に小さな手を置いた。
「ふあ! なんかくすぐったい!」
「ソフィーちゃんの魔力がお盆に吸い出されているのよ。もう、ちょっと我慢してね」
「はーい!」
金属製のお盆には、ソフィーの手を中心に何やら模様が現れ始めた。
(基板に似ているな)
お盆に現れた模様は左右非対称で、まるで機械に使われている電子基板のようだ。
モナさんは、お盆の様子をジッと見ている。
「四大魔法の属性はなさそうね」
四大魔法……。
俺はシスターメアリーにお借りした魔法の入門書を思い出す。
四大魔法は、火、水、土、風の属性魔法だったな?
「モナさん。四大魔法は、火、水、土、風ですよね? ソフィーはこの四種類の魔法が使えないのでしょうか?」
「ええ。四大魔法の適性がないと検査結果に出ていますね。四大魔法は使える人が多いから、先輩冒険者から教わりやすいし、属性魔法が弱点の魔物も多いんですよ。適性がないのは、残念ですね」
「そうなんですか」
なるほどね。
使い手が多いから学習しやすいとか、対魔物の話とか、入門書には書いてない実践的な話が聞けた。
「属性が増えることはないのでしょうか?」
「ソフィーちゃんは、まだ子供だから成長して属性が増える可能性はあります」
「なるほど。あくまで現時点で使える魔法属性の話ですね」
「ええ。そうです……、あっ……これ……」
銀色のお盆の中に刻まれた回路のような模様にソフィーの魔力が満たされていく。
回路の一部が強く光り、モナさんがお盆をのぞき込んだ。
「雷と氷の属性がありますね! かなり珍しい適性ですよ」
「おお! ソフィー! 凄いぞ!」
「やったー!」
俺とソフィーは、大喜びした。
しかし、モナさんは申し訳なさそうな顔をしている。
どうしたのだろう?
「モナさん? 何か不味いことでも?」
モナさんは、ソフィーに優しく語りかけた。
「えっとね……。ソフィーちゃんが、珍しい属性魔法に適性があるのは間違いないの。でもね。雷と氷の魔法を使える魔法使いは少ないの。だからね。教えてくれる魔法の先生がいないの」
「ええ!?」
「がびょん!」
俺は予想外な言葉にショックを受ける。
教えてくる人がいない?
先生がいないと魔法は使えないのだろうか?
「モナさん。魔法は先生がいないと覚えられないのでしょうか? 私は魔法の入門書を読んで生活魔法を自分で覚えましたが?」
「生活魔法は簡単なんですよ。けど攻撃魔法は難しいです」
「特定の呪文を唱えたら魔法が発射されるということは? 例えば『雷よ! 我が敵を撃て!』みたいな?」
俺の質問にモナさんは残念な表情で首を振った。
「呪文に決まりはないのです。確かに呪文を唱えて魔法を行使する人もいますが、呪文は魔法のイメージを高めるためなんですよ。呪文詠唱なしでも、イメージがしっかりしていれば魔法は発動します」
「ええ!? そうなんですか!?」
「はい。だから属性魔法を教わる時は、師匠が魔法を使って見せて、弟子が真似することで、魔法を行使したイメージをつかむんです」
うーむ、見て覚えるということか……。
そうなると珍しい属性魔法に適性があったとしても、マスターするのは困難だな……。
「あの……何か本はないでしょうか? 雷と氷の魔法の手引き書みたいな本があれば、独学でも覚えられると思うのですが?」
「ごめんなさい。少なくとも、このギルドにはないですね」
「うーん……」
わかったこととしては――。
ソフィーに適性がある属性は雷と氷。
しかし、雷と氷は使い手が少ないのでマスターするのが難しい。
他の都市に行けば、雷や氷の使い手はいるかもしれないが、必ずいるとは限らない。
参考書もない。
ソフィーはションボリとしてしまった。
後でクリームパンを食べさせなければ!
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