第2話 異世界へ転生!
『ああ、なんてことだ!』
『かわいそうに死んでしまった!』
『せっかくみんなに感謝されていたのに……』
『なかなか善良な男だった……残念!』
『それなら転生させてあげよう!』
『違う世界なら大丈夫だよ!』
『そうだな! また違う世界で良いことをしてもらおう!』
『同じ体を作ってあげよう!』
『この乗り物も一緒に持って行ってあげよう!』
『どうせなら、ちょっと特別に仕上げてあげよう!』
『完成だー!』
『じゃあ、がんばれー!』
*
「ハッ!」
俺は移動販売車の運転席で目を覚ました。
頭がボンヤリしている。
確か……、峠道で砂利トラが突っ込んできて……、事故に……!
「あれ?」
俺は間の抜けた声を出した。
事故ったはずなのに、俺は無事なのだ。
体のどこも痛くない。バックミラーに自分の顔を映してみるが、顔に傷一つない。
移動販売車のフロントガラスも壊れていない。
どういうことだろう?
奇跡的に助かったのかな?
俺は車のダメージを確認しようと移動販売車の運転席から降りた。
移動販売車は新品同様で、どこにも傷はなかった。
荷台の扉を開けてみたが、商品も全て無事だ。
移動販売車が無事で良かった。
この移動販売車に乗るようになって、まだ二か月だが、相棒のような愛着が湧いているのだ。
それにしても不思議だ。
事故にあったのは間違いないのに、俺は怪我をしていないし、移動販売車も無事だ。
「一体どうなってるんだろう?」
俺は運転席に戻ろうと歩き出した。
すると目の前には……!
遥か先まで広がる大地が見えた。
「ええっ!?」
俺は辺りを見回す。
草原、森、遠くに見える高い山、抜けるような青い空、真っ白な雲。
大自然の真ん中に俺は立っている。
俺はしばらく呆然と立ち尽くしていたが、あることに気が付いた。
「電柱がない……。ビルや家もない……」
人工建造物がないのだ!
見渡す限りの大自然……ここ日本じゃないだろう……。
ある可能性が俺の頭をよぎった。
「まさか……、ここは異世界!?」
あり得る……!
砂利トラと衝突したショックで、異世界に来てしまった……。
そういえば、夢を見た気がする。
かすかに覚えているが、夢の中で誰かが転生とか、違う世界とか言っていたような気がする……。
「ええい! 落ち着け!」
俺は顔をパンと両手で叩いて気合いを入れ、運転席に戻った。
ダッシュボードの時計を見ると午前十時。事故が起きた時間だ。
「これからどうするかな……」
俺は不安から独り言をつぶやく。
ここがどこなのかわからないが、暗くなるまでに人里にたどり着きたい。
「車は動くかな?」
人里にたどり着くには足が必要だ。
この移動販売車が動けばありがたいのだが……。
キーを回してエンジンをかける。
「やった! エンジンがかかった!」
あれだけの事故があったにも関わらず、エンジンはいつもと変わらない調子で動き出した。
「おや?」
俺はダッシュボードに目をやる。
カーナビが動いていることに気が付いた。
この先に道があり、町か村があるようだ。
名前は、サイドクリークと表示されている。
「よし! 人里に出よう! まず、サイドクリークを目指してみるか!」
俺はサイドクリークへ移動販売車を走らせた。
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