NTRゲームの不良男に転生しちゃったけどメインヒロインを不幸せにしたくないから真面目に生きるわ。

榊原イオリ

第一章:ヒロインとの出会い

第0話:目が覚めたらNTRゲームのクズ男に転生してた

 とある日の朝。


「……あれ? 誰だこの顔??」


 俺はベッドから起き上がり洗面所に向かっていき、そして洗面所についた俺は歯磨きを始めていった。


 そしてその時にふと鏡に映し出されている自分の顔を見たんだけど……そこには全然知らないチャラ男の顔が映し出されていた。


 俺の顔はもっと普通の顔をしている大学生の男だった。少なくとも鏡に映し出されているこんな金髪のチャラ男ではなかった。見た目はカッコ良い感じだけど誰がどう見ても不良にしか見えない。


「うーん? 夢ってわけでもなさそうだよな?」


 俺は自分の顔をペタペタと触りながらそんな事を呟いた。だって触感とか普通に本物だし、それにちょっとだけ頬を引っ張ってみたんだけど普通に痛かった。


「……あ、もしかしてこれって異世界転生ってやつか?」


 俺は歯磨きをしながらそう納得していった。そういや最近はそういう小説とかアニメがめっちゃ流行ってた気がする。


 普通に暮らしていた学生が神様の勘違いで異世界に飛ばされてしまい、ついでに神様からチート魔法を貰ってその世界で無双するってやつ。なんか最近はそういうのが凄い流行ってるんだよな?


「って事は俺も神様の勘違いで異世界に飛ばして貰えたって事か? 何だそれめっちゃ面白そうじゃん!」


 俺はそんな事を思いながら辺りをキョロキョロと見渡してみた。そしてすぐにある事に気が付いた。


「……いや、でもここって普通に日本だよな? それなら別に“異世界”ってわけじゃないのかな……?」


 今使ってる歯磨き粉の成分表とか普通に日本語で書かれてるし、それ以外にも至る場所に日本語の文字が記載されてるようだから……まぁ普通に考えたらここは日本だろうな。


「それじゃあ異世界転生とはちょっと違うって事か。という事は神様にチート魔法とか貰えたりするイベントもなさそうだな。うーん、それはちょっと残念だな……」


 せっかく有名な異世界転生が俺にも起きたと思ったのに、転生先が現代の日本じゃあ何のチート能力も貰えないよな。俺は少しだけ残念がりながらも歯磨きを続けていった。


「はぁ、どうせ転生するなら剣とか魔法を駆使して無双するような異世界に行きたかったなぁ……って、あれ? でもこの不良顔をどこかで見た記憶があるような気がするんだけど……?」


 俺は歯を磨きながらもう一度鏡に映し出された俺の顔を見てみると、そういえば何処かでこの顔を見た気がしてきた。でも一体何処でこの顔を見たんだっけな?


「うーん、何処で見たんだっけか……あっ!!」


 その時、唐突に俺は思い出してしまった。この不良顔の男が一体誰なのか……それは……。


「こ、こいつ……クズマじゃねぇかよ!」


 俺は洗面所で自分の顔を見ながらそう叫んでいった。


◇◇◇◇


 クズマこと葛原雅人くずはら まさとはとある恋愛ゲームに登場する悪役の不良キャラだった。


 そしてその恋愛ゲームの作中でクズマは極悪非道な悪役として主人公が惚れていた幼馴染の女の子を色々な手を使って寝取るという不良男だった。という事でつまりこの世界は……。


「い、いや、それじゃあ転生は転生でも……ここって“ギャルゲー”の世界なのかよ!」


 という事で俺が転生してきたこの世界は、どうやら少し前に発売された超名作PCギャルゲーの『どんなに頑張っても最愛の幼馴染がクラスのヤンキーに寝取られてしまう件について……』の世界のようだった。


 このゲームはまんまタイトル通り、メインヒロインは主人公の幼馴染が一人だけしか居ないんだけど、分岐ルートによってその幼馴染がどう寝取られていくかが変わるという純度100%のNTRゲームだった。


 なので当然だけど幼馴染がクズマに寝取られずに主人公と幼馴染が結ばれるというハッピーエンドは一つも用意されていない。どのルートに行っても最終的に主人公の幼馴染はクズマに寝取られてしまうのだ。つまり主人公の脳破壊が毎回必ず起きてしまうという本当に末恐ろしいゲームだった。


 でもこのゲームの文章、イラスト、CVはどれもが高水準にまとまっていて、序盤~中盤まではずっと素晴らしい感じになっていた。


 そして主人公の男子も結構普通の男子って感じで感情移入もしやすかったので、主人公に感情移入しながらヒロインと楽しくイチャイチャと出来る素晴らしい恋愛ゲームだった。


 でも中盤以降から不良男のクズマによる怒涛のNTR展開によって主人公と俺達プレイヤーの心を思いっきり抉ってくるという恐ろしい作品でもあった。そしてそんなNTRゲームを“神ゲー”と称して大学の友人が俺に貸してくれたんだ。


(いや、確かに俺は大学の研究室で実験中の待ち時間が暇だから面白いノベルゲームを貸して欲しいとは言ったよ? でもそれで純度100%の鬱NTRゲームを俺に渡してくるなんて思わないじゃん!!)


 だけど俺は友人からゲームを借りてしまった手前……すぐに返却してしまうのは申し訳ないと思ったのでちゃんとプレイしてみたんだけど、でも俺はNTR耐性が全然ないタイプだったんだ。いや普通に考えてNTR耐性がある人の方が稀有な存在だと思うんだけどさ。


 という事で当時の俺は普通にプレイしていき主人公にどんどんと感情移入していってしまい……そして最終的には主人公と一緒に俺も脳が破壊されていってしまったのであった。


 俺はどんな作品でもハッピーエンドで終わってくれないと本当に辛いって思ってしまうタイプだから尚更プレイしていてキツかった覚えがある。


「……いや、でも何で俺がこのゲーム世界に転生したんだ? しかも何でよりにもよってクソキャラのクズマに転生したんだよ……」


 という事で俺は鏡に映し出されている悪役面をした自分の顔をペチペチと叩きながらそんな事を呟いていった。


 俺が転生してしまった悪役の葛原雅人クズマについてなのだが、クズマはどのルートに行っても主人公の幼馴染を色々な手段でNTRしていくという自分勝手な不良男だった。


 しかもどのエンディングを迎えたとしても、その寝取られたヒロインも最終的にはクズマにゴミのようにポイっと捨てられて絶望するという胸糞エンディングしか用意されてないのだ。


 という事でどのルートに進んだとしても主人公もヒロインもどちらも最終的に絶望するしかないという、あまりにも救いようのないゲームがこの『どんなに頑張っても最愛の幼馴染がクラスのヤンキーに寝取られてしまう件について……』という作品だった。


「はぁ、どうせならもっと主人公寄りの良い奴キャラに転生させてくれよなぁ……」


 俺はため息を付きながらも自分の姿をもう一度じっくりと見ていく事にした。


 俺の身長は175センチくらいで、体型はそれなりに筋肉がついてかなり引き締まっている。髪型は金髪のウルフカットで耳には沢山のピアスを付けており、典型的なチャラ男といった感じの風貌をしていた。まぁ見た目はかなりカッコ良いとは思うが……。


「うん、まぁでもこれは典型的なマンガとかゲームとかで登場する不良顔というか悪役顔だな……」


 という事で俺は自分の顔を改めて確認し終えてからもう一度深くため息をついた。


 まさか転生した先が悪役キャラだなんて……いやマジでこれからどうやって生きていけばいいんだよ……。


「いやでも流石に俺もクズマと同じ道を辿るのだけは絶対に嫌だからな……NTRとか浮気とか不倫みたいなのってフィクションだからこそギリギリ許せるみたいな所があるんだからさ……だからそんな事を俺が実行しなきゃいけないなんて絶対に嫌だからな……」


 もしもここがあのNTRゲームの世界だとしたら、今後の俺はヒロインと主人公が楽しくイチャイチャとしているのに、その仲を完全に引き裂いてヒロインを寝取っていき主人公の脳を破壊する事になる。でもそれはクズマが好んでやる事であって、普通の大学生な俺はそんな事は絶対にしたくない……。


 それにNTRジャンルが非常に人気のあるコンテンツだというのは俺も理解してはいるんだけど、でもそれを実際の世界でやろうとするのは絶対に違うからな。


 というかNTRとか浮気とか不倫みたいなのってフィクション作品だからギリギリ娯楽として楽しめるのであって、それを実際の世界でやろうとするのはただの愚かな行為でしかないからな! 場合によっては普通に裁判沙汰とかになるからな!


「……うん、こうなったら……俺は何もせずに穏やかな日々を過ごす事にしよう……!」


 という事で普通の大学生な俺としては変な事に巻き込まれたくないし、そもそもハッピーエンド以外は絶対に見たくないので……だからこそ俺はメインヒロインを寝取ったりなんかせず穏やかなモブキャラとして一生を過ごす事に決めた。

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