逃避

翠雲花

第1話 プロローグ



 ある日、夢を見た。

 いつものように、色鮮やかで音も匂いもハッキリと覚えている夢。

 これは夢であり、正夢となるものだとすぐに分かった。

 なぜなら、ワタシは何度も正夢となる夢を体験していたからである。



 夢の始まりは、あるイベントの集まりからである。

 老若男女問わず、十名ほどの集まりであったイベントには、参加券が必要だった。

 それはまるで、夢への参加券のようで、皆戸惑いながらもその場に集まっているのだ。



「お集まりの皆様、ようこそお越しくださいました。この度、ゲームの進行を務めさせていただきます、――と申します。よろしくお願いいたします」



 男性はどこから来たのか分からないが、突然ワタシ達の目の前に現れた。

 名前は聞き取れなかったが、夢なのだからなんでもアリだろうと思い、ゲームの内容を聞く。



 ゲームとは、このスタート地点からゴールを目指すという簡単なもので、ゴールまでの道のりは複数あると言う。

 道によっては遠回りにもなり、逆に近道もあったりと、さまざまな道が用意されているが、一つの道に一人だけが通る事ができる。

 そして、ゴールに辿り着いた順からくじを引く。

 そのくじには、バツとマルが書いてあり、マルを引いた人はゲームから抜けられるようだ。



「簡単でしょう?これはあなた方の運です。さて、ゲームを始めましょう」



 そこで、男性がパチンと手を叩き、その瞬間になって漸く男性の顔を認識できたが、その男性は泣き笑いの面をつけていた。

 ワタシが男性の面に気を取られているうちに、他の参加者は道を選んで進んで行く。

 ワタシは最後の余った道を選び、遅れないよう走ってゴールを目指した。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る