第22話・ジョブセレクト

「ここからは各自のジョブを決めていくわよ!」


 チーム名を決めたことでテンションが上がった幼女が高らかに宣言する。


 ちなみにジョブとは多人数戦にのみ適用することの出来る追加ルールである。

 多種多様な職業から各自1つ選択することで、身体能力への補正や特殊能力を使用することが出来る。


「はいはーい!」

却下きやっかよ!」

「どうしてですかぁ!!」


 こしお∶この流れさっきも見たな

 田中太郎∶フィーちゃんはギャグ要員だからな

 ドシラソ∶可愛いければ問題無いの精神


「アンタのことだからおふざけ枠のピエロとか選ぶでしょう」

「失礼な! いくらアタシでも道化どうけにはなれませんよ!」

「それでは何にするつもりだったのです?」

詐欺師さぎしです!」


 途端、頭痛がした。

 それも気圧が低い時に地味に痛むやつである。


 マジカルまじあ:詐欺師って性能的にどうだっけ?

 農夫:下から数えた方が早い。能力補正がカスで特殊能力もゴミ

 テイト:プレイヤー1人を味方に勧誘出来るがあるんだっけ?

 RUT:よっわww


「えぇ、面白いじゃないですかぁ。活躍したらきっと盛り上がりますよ!」

「活躍出来る見込みもないから言ってんの! 下手したらめプ扱いよ!」

「むぅ! ガンマ様はどう思います!」


 突如矛先ほこさきが飛んでくる。

 彼女が詐欺師にどういう思い入れがあるのかは分からないが、あまり合っているようには思えなかった。


「フィーはもっとアグレッシブなタイプの方がやりやすいんじゃないか?」

「分かりました! 変えます」

「本当現金よねぇ、アンタ」


 頬杖ほおづえをつきながらシグマがぼやく。


「アグレッシブさというと、ナイトにシーフあたりでしょうか。武道家や魔法剣士なんてのもアリか」

「魔法剣士はシグマと被るからダメ。他のにしなさい」


 シグマは以前から同じ職業を使い続けてきたようだ。

 パーティーでジョブ被りのメリットは薄いため、彼女の言う通り避けるのが無難だろう。


「どれもあんまりしっくりきませんね。イマイチピンと来ないというか」


 一覧をスクロールしながら赤髪が喋る。


「それなら斥候レンジャーとかどうだ? ダンジョンのマッピング能力が上がるのは有用だし、何より機敏きびんさが求められる。フィーにはピッタリだろ?」


(それに元ネットストーカーで何処となく嚙み合ってるというのもある)


「承知しました。ガンマ様の命とあれば。アタシ斥候レンジャーになります!」


 田中太郎:判断が早い

 ベンジャミン:流石妄信者もうしんしゃ

 豚:やっぱ俺達のフィーちゃんは最高だな!


「本当に斥候レンジャーにするの? 味方の位置が分かる通信者コミュニケーターや対戦相手の位置が分かるスパイも結構アンタに合ってるわよ」

「推しの提案の前ではアタシの適性など塵芥ちりあくたと同じです」

「そう。ま、アンタが満足ならそれで良いわ」


 ホワイトボードのフィーの名前の横に決まった職業を書き込む。

 ついでにシグマの横にも魔法剣士とつづっていた。


斥候レンジャーは便利枠だし、魔法剣士は戦闘も補助もいける位置を問わないバランスタイプ。と、なると、あとは前衛1人、後衛1人といったところでしょうか」

「便利枠2人で後衛1人ってのも考えられるわね。ガンマとシータは何か希望はないの?」


 聞かれて腕を組むガンマ。

 前から考えてはいたものの、はっきりと回答は出ていなかった。


「私、あります」


 強い口調で告げたのはシータだ。

 どうやらガンマと違ってやりたいことがあるようだ。


「私は罠師わなしが良いです」

「罠師?」


 あまり馴染みの無いワードについつい検索するガンマ。


 特殊能力は文字通り罠を作ること。

 落とし穴は勿論。敵の足を挟むトラバサミや自動で弓矢を打ち出す自動ボウガンなどがあった。


 しかしながら基礎能力に対する補正は無く、実戦よりかと言われるとあまりそのような気はしなかった。


「罠師ねぇ。凄く強いジョブじゃないけど、弱いわけでもないわね。シグマは構わないけど、何かやってみたい理由はあるわけ?」

「チームの強みと私自身の能力を加味した結果、これが最適だと思いまして」


 トランスフルスイング:チームの強み?

 日下部くさかべハルカ:女の子が可愛い

 沖漬け:シータは可愛いかどうか分からんだろ

 1分:この声と胸で可愛くない訳ないだろ!!


「このチームの強みですか? 推しがいることでしょうか」

「それはアンタだけでしょうが。黙って聞きなさいな」


 シータは一度目を閉じた後、静かにガンマの方を見つめた。


「それはガンマさんです」

「やっぱりアタシの言う通りじゃあないですかぁ!!」

「お前は黙ってなさい」

「シュン……」


 縮こまった赤髪を可哀想な目で一瞥いちべつしたシータが続ける。


「ガンマさんが保有するバグ技については周知の事実かと思います。対戦相手の方もきっと警戒してくることかと思います」

「つまり罠師であればガンマ様を守れると」

「それだけではありません。ガンマさんを脅威きょういとらえているチームなら恐らく潰しにくることでしょう」


 ディバイ:あ、察し

 花火:えぐいこと考えるね


「相手を罠にハメて一網打尽。もしくはその隙にダンジョン攻略ってわけね。面白いじゃない」

「俺は囮役おとりやくってことか」

「切り札でもありますよ?」


(どちらにしろ重要な役割ってことには変わりないか。多人数戦用のバグ技なんてまるで心当たりがないけど)


「じゃあ、シータは罠師で。罠師も後衛とは言えなくともないけど、こうなってくるとガンマは」

「極力全員をバックアップ出来て、それでいてやりたいことが出来るように敏捷しゅんびんさのステータス補正が高い職になりますね」

「そんなジョブありますか?」


 全員が全員うなり声を上げながら職業一覧を確認していく。

 しかし数秒後。一斉に声を上げた。


「「「執事バトラー!!」」」


 執事バトラーは体力・防御力周りの基礎ステータス大幅低下の代わりに、敏捷力と攻撃力を得る。そして、特殊能力として味方へのステータス強化付与と回復能力。

 まさにガンマに打ってつけの職業だった。


「決まりね! これで行きましょう! 楽しみになってきたわ!」

「アタシもです。ドキドキしてきました!」

不束者ふつつかものですが改めて宜しくお願いします」

「はい、頑張っていきましょう!」


 すっかりテンションの上がったメンバーがそれぞれの思いを口にする。

 短い間の付き合いだが、すっかりと意気投合していた。


 カー:実際のところ斥候レンジャー、魔法剣士、罠師、執事バトラーの組み合わせってどうなの?

 たん:普通ならやらないけど、面子が普通じゃないから良いんじゃない?

 Egge:これで勝ったらすげー盛り上がりそう

 田中太郎:こっちまでテンション上がってきた!


 こうして『チーム:キャラクター』が完成した。


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