08:お散歩へ行こう

「⋯⋯ふぁ」


 目が覚めて外を見てみると、いいお天気でお散歩日和。


「せっかくだしお散歩でも行こうかな」


 仕事を辞めてからは家にいることが多くなった私はそれ以来、お散歩を日課にしていました。


 お散歩していればふとした時に新しい発見をしたりすることもあったけど、今回は全てが新しい場所。


 昨日回ってない場所もたくさんあるし、楽しみだな。


「はぁ⋯⋯流石にまだ寒いなぁ」


 準備を終えて家を出ると若干の寒さが私を迎えてくれます。ある程度暖かい格好をしているので大丈夫ですが、顔にかかる風までは流石に防げません。


 歩き始めようとすると視界にはリンくんのお家が入ってきます。


「⋯⋯流石に寝てるよね」


 そう思っていると、2階の窓がガラガラと開く音がしました。


 チラッと見ると、リンくんが洗濯物を干そうとしていたようで、たまたま視線が合ってしまいます。


「あっ⋯⋯」

「あっ、詩音おねーさんおはようございます!」

「リンくんもおはよう」

「こんな時間からお出かけですか?」

「えーっと、お散歩に行こうかなって思って」

「なるほど!」

「えっと⋯⋯良かったら一緒に行く?」

「い、良いんですか!?」


 私が思わず誘ってしまうと、とても嬉しそうな表情をするリンくん。その顔は誘って良かったと思わされるくらい良い笑顔で、こっちまで嬉しくなっちゃう。


「すぐ準備するので待っててください!」

「うん、焦らなくて大丈夫だよ」


 実際、散歩は最近のルーティンみたいなものだし、時間なんて余ってるくらいだから。


 それから数分でリンくんは玄関から出てきました。


 焦っていたからなのか、少し息が切れているみたい。


「お、お待たせしました⋯⋯」

「全然待ってないから大丈夫だよ?

 それじゃ、行こっか」

「はい!」


 そう私が言うと、リンくんは私の手を握りながら返事をします。


「ッ!?」

「あっ、もしかして⋯⋯嫌、でしたか?」

「ち、ちがうの!」

「なら良かったです!」


 言えるわけない。私も手繋ぎたかったと思ってたなんて。


 実際口にすることは出来ず、私はそのまま歩き出します。



 住宅地が多いこの付近にはあまり見る場所が無いかと思っていたら、それなりに大きな公園があったり、小さな個人でやってる居酒屋さんがあったり、なんとこの時代にまさかの駄菓子屋さんまであるなんて。


「駄菓子屋さんなんてまだあったんだ⋯⋯」

「ここはボクも結構通ってるところですね!

 中に大きな鉄板があって、その鉄板で目玉焼きを焼いて、おせんべいの上に乗せてソースかけてくれるたませんって言うのが子供に大人気なんですよ!」

「レトロスタイルの駄菓子屋すぎない!?」

「でもこの付近だと割と有名ですよ?」

「今の時代、駄菓子屋自体が減ってきてるから駄菓子屋さんが残ってるってだけでも十分凄いよ⋯⋯」

「それはそうかもしれないですね!

 お菓子だけならコンビニで事足りちゃいますし」


 そんな話をしながらお散歩をしていた私達。


 すると、リンくん以外のこの街に住んでる人を初めてみかけた。


 よく見てみると、その子はリンくんよりは少し背が高くて、若干幼い顔をしているけど、かなりの美人さんに見える。


「あっ、リトくんだ」

「リン、おはよ」

「うん、おはよー」

「お散歩?」

「そうだよ!」

「珍しい⋯⋯その人は?」

「えっと、このおねーさんは⋯⋯」

「私は鈴代詩音、よろしくね」

「ん⋯⋯ぼくはリト。

 お姉さん、よろしく」


 リトくんと言ったこの男の子は小さな声で自己紹介をしてくれる。


「リトくんは喋るのが苦手なだけだから、気にしないであげて欲しいです!」

「ん⋯⋯迷惑だったら、ごめんなさい」

「そんなことないから大丈夫!」

「よかった」

「ちなみにリトくんがこんな時間から珍しいね?」

「隣に、好みの人が引っ越してきた。

 ずっと家にいたらむずむずするから気分転換」

「えっ、リトくんも?」

「も?もしかして、このお姉さんも?」

「そ、そうだね。私も昨日引っ越してきたの」

「なのに、もうイチャイチャ?

 リン、ずるい。羨ましい」

「い、イチャイチャって⋯⋯あっ」


 リンくんはリトくんに言われて自分の手を見た。


 ⋯⋯うん。握っちゃってるもんね。そりゃ、イチャイチャしてるように見えるよね。


「どうやったら近付ける?

 挨拶には来てくれたけど、恥ずかしくて、まともに喋れなかった」

「⋯⋯もしかしてだけど、引っ越してきたのって、梅原奏って人だったりする?」


 梅原奏、私の親友であるうめちゃんの本名。


 私がうめちゃんと呼び続けているのに理由はない。ただ小さな頃からそう呼んでただけ。


「⋯⋯そう。なんで分かるの?」

「私の友達だからね」

「友達⋯⋯?」

「そうだよ」


 私がそう言うと、リトくんは深呼吸をする。


「紹介、してほしい」


 勇気を出してリトくんは私にそう言った。


「少し時間をくれるなら、良いよ」

「うん。待ってる」


 リトくんはそう言うと、用事があるからこれでとどこかへと歩いて行った。


 その時に、また明日と言っていたのが少し気になった。


「また明日?」

「えっと、明日から学校があるんです」

「学校!?でももう大人って⋯⋯」

「ボク達は大人になってから大学に行くんです!」

「なるほど⋯⋯」

「だから、詩音おねーさんと会う時間が減っちゃいます⋯⋯」

「それならこうやって朝にお散歩でもする?」

「えっ⋯⋯」

「そうしたら毎日会えるよ?」


 私は何故かそんなことを口に出していた。


 私ってこんなに積極的だったっけ?



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作者の二兎凛です。

リハビリ感覚で始めた連載ですが、明らかに10万文字は厳しかったです!


ある程度書く能力が復活したらもう一つの失恋vtuberにも更新頻度を割く予定です。

がレビューなど頂けるとモチベがぐんぐんアップするのでよければご協力頂けると嬉しいです!

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